世界は称賛に値する

日記を書きます

2024年02月04日(日)電話越しの並行世界の日

パララバ

パララバ ―Parallel lovers― (電撃文庫)

『パララバ』(静月遠火/電撃文庫)を読んだ。第15回電撃小説大賞の、金賞受賞作。評価に違わず素敵な物語だった。一気読みのおもしろさだった。人間の細かい描きかたから『タイムリープ』の匂いがするなと思っていたら、ほんとうにタイムリープチルドレン的な位置づけがあった。笑った。ごく普通の学生らの振る舞いがほんのり不穏に描写されていく空気が似ていた。そして、かなりおもしろかった。読了後、同作者の別の作品も読んでみたいと著書一覧に飛んでみたのだけど、トータルで5作くらいしか並んでおらず、あれ、そうなんだ、と残念な気持ちになった。もっとたくさん並ぶんじゃないかなとなんとなく期待した。それくらいの地力や筆力も感じたのだった。まあでもそういうこともある。ゲームシナリオ等も手がけられているそうなので、もしかしたら小説ではなくシナリオ寄りで動かれている昨今なのかもしれないが、実状は不明だ。あと、BISビブリオバトル部シリーズ(山本弘)内で紹介されていた作品らしくて、そちらのほうも気になった。

恋する相手が亡くなった世界と、自分自身が亡くなった世界が交錯する、パラレルワールド的なサスペンスとラブストーリー。SF風味はあるものの、状況や違和感に対する考察や分析はさほど強くない。サスペンスやミステリとしての仕立てかたのほうが割合が大きい。いろいろな人物のちょっとした違和感が積み重なっていって、誰もが怪しく見えてくる、という語りの腕前は見事だった。個人的な好みでいえば、登場人物らを、さらに一段、個性強めにしてくれてもよい、とは感じた。キャラクター感・人形感・作劇感が強まるのと表裏一体なので難しいが。語り部となる主人公側はともかく、恋する相手側の人物像は、ややつかみづらかった。ともかくと書いておいてなんだが主人公についても人物像の魅力がつかみづらいところはあったし。でもラメルさんは素敵な雰囲気だったか。といった好み的な希望はあるにせよ、かなりよい読書体験だった。同じ作者の別の作品も読んでみるつもりだ。

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