- 作者: 梅田卓夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/02/01
- メディア: 文庫
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《★★★★★》
何も書くことがないと言っている人でも、ひとまずコップの絵なら描けるでしょう。ことばは何も浮かんでこなくても、絵なら、描く対象は目の前にあるのですから、それを見えるとおりに紙の上に写せばいい。じょうず・へたは今は問わないことにしましょう。
というと、気が楽になるのか、こんどは「コップの絵ぐらい、見なくても描ける」と、思う人が出てきます。ことばにはしなくても、こころの中でそう思う。いや、思わなくても、実際に描く段になるとそうしてしまう。見ないで描いてしまうのです。そうして描かれる絵はたいてい、右ページの図のようなものになります。見なくても描ける絵、ひととおり知っておれば描ける絵。それをふつう〈概念図〉と呼びます。私たちは、日常、コップというものを「知って」います。だから水の入ったコップの絵(概念図)を描くことができます。逆にいえば「知っている」とは一般的にこの(絵の)程度のことをいうことが多いのです。
――P.82
▼無茶苦茶いい本だなこれ、と思った。ばっちり好きだ。加藤典洋氏の著書『言語表現法講義』と同じ系統の書物だと言っていいだろう。というか、根にある思想が同じものだよな、と思えた。どちらが好きか選べ、と言われたら、迷った末に「勘弁してください」とか言ってしまうだろうな、なんて思ったりもした。▼連想こそ人間の個性だ、なんて最近は判断している。きちんと観察することで『連想』される断片的で個人的な言葉たち、をひどく丁寧に描こうとすること。決して逃げることなく、決してサボることなく、いまここにいる『私』が『私』であるがゆえに創造できる世界を創世すること。の重要性。言葉はおもしろい、ということをわかりやすく教えてくれる。好きな思考だなあ、と思った。