Dクラッカーズ〈3〉祭典‐ceremony (富士見ミステリー文庫)
- 作者: あざの耕平,村崎久都
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2002/01
- メディア: 文庫
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《70点》
P.173
カークの悪魔は極めて特殊な性質を持っている。まず彼の悪魔は意志を持たない。ほとんどの悪魔が多かれ少なかれ自立した意志を有しているにもかかわらず、彼の悪魔にはそれがない。従って彼は自分の悪魔を完全に制御することができた。さらに彼の悪魔には気配がない。たとえ召喚したあとでも、それを悟られる心配がないのだ。
そして、彼の悪魔は強力だった。小型拳銃の姿をした悪魔の射程距離は実に一キロ以上。しかも一度発射された弾丸は物理法則に囚われない弾道を描いて、目標を外すことがない。着弾したあとは肉体を傷つけず、目標の精神に入り込んで内部から破壊する。
暗殺に特化した攻撃型悪魔。それがカークの悪魔なのだ。これこそ彼がウィザード排除に選ばれた最大の理由だった。
ノーマークである館内からの攻撃。しかも奴は悪魔を自分の影に潜めている。この闇では召喚することすらできない。反撃はおろか防御も不可能。
――さあ、覚悟はいいか、ウィザードよ。
グリップを握る手が汗ばんだ。あの伝説の――幾多の悪魔を葬り、甲斐氷太を退け、執行細胞(ファースト・セル)ですらその名に注意を払う古強者を、この手で殺す。それはかつてない興奮だった。