世界は称賛に値する

日記を書きます

批評理論入門 『フランケンシュタイン解剖講義』』(廣野由美子)P.81

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

《80点》

10『イメジャリー』imagery
 ある要素によって、想像力が刺激され、視覚的映像などが喚起される場合、そのようなイメージ(心像)を喚起する作用を、「イメジャリー」と呼ぶ。また、イメージの集合体をイメジャリーという場合もある。
 イメジャリーにも、さまざまな働きがある。あることを示すために、別のものを示し、それらの間にある共通性を暗示する場合は、「メタファー」(metaphor)という。特に類似性のないものを示して、連想されるものを暗示する場合は、「象徴」(symbol)である。具体的なものをとおして、ある抽象的な概念を暗示し、教訓的な含みを持たせる場合は、「アレゴリー」(allegory)という。
「森」というイメジャリーを例に挙げてみよう。「風車の森」というときは、本物の森を指しているわけではなく、風車の群れを「森」に譬えている。したがってこれは、メタファーである。寓意的物語の場合は、物語の背後にもうひとつの意味体系、つまりアレゴリーのレベルが構築されている。ダンテ(Dante Alighieri, 1265-1321)が『神曲』(Divina Commedia, 1304-21)の〈地獄篇〉において、森の中で道に迷うとき、「森」は「過ち」のアレゴリーである。シェークスピア(William Shakespeare, 1564-1616)の『お気に召すまま』(As You Like It, 1599-1600)では、「アーデンの森」が舞台になっている。物語が展開するにつれて、「森」は豊かな象徴性を帯びてくる。それは、文明からの逃避の場所であり、「自由の世界」や「夢の世界」「再生」「調和」「回帰」など多重の意味合いをおびえた象徴として機能している。