世界は称賛に値する

日記を書きます

本の記憶

 読書後、数日以内に感想というかまとめを書くのはどうかな、って思ったことが二〇回くらいある。エビングハウスの忘却曲線(20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。1ヶ月後には、79%を忘却し、21%を覚えていた)を知ったからだ。記憶術系の情報を知ると、たいていこのあたりのことを踏まえて書かれていて、実感的にもそれで正しいと思うけど、とにかく、記憶は復習であり、そして、復習を繰り返すことで、本当に憶えられる。思った以上に憶えられる。
 正直なところ、本の内容は、ずっと憶えておきたい派だ。
 大切なことならちゃんと憶えてられるはずだよ、みたいな、運命頼りな意見も時折聞くけど、そして「それもそうかもなあ」って思うこともあるけど、まあ冷静に考えると、そんな都合のいいものなのか? 記憶って? 自分にとって、人生にとって、大切か大切じゃないかを、そんなに綺麗に見極めてくれるの? みたいなことを思うので、そういう思想もわりといいかなー、って思いながらも、全面的に頼ってしまうことだけは避けるようにしている。人間の構造って思ったより都合よかったりするところは確かにあったりするので、ある程度は都合よく捉えておいてもいいのかもだけど、ま、そこまで信じるには根拠が足らないので、一応、大切なことだろうが大切じゃなかろうが忘れる時は忘れるし憶える時は憶える、ってことを前提にしている。安全弁として、って言えるかな。
 いやだって、本っておもしろいし、すごいいい情報が沢山あるじゃないですか。忘れるなんてとんでもない、っていうか。えーと、まあ、小説と学術書とビジネス書じゃちょっと違うとか、まああるけど、憶えてられるなら憶えておくとよいものっていっぱいあるし、でも忘れちゃうことっていうのもいっぱいある。いっぱいあった。なんでこれ忘れちゃってたんだー、なんて、何回も思ってきたじゃないか、って思う。
 なのに、忘れてもいいよー、忘れないように頑張る必要なんてないよー、というのは、言えない。まあ限界があるし、効率とか、優先順位とかもあるから、ここに力点を置くのは違うでしょ、っていう判断はアリかなって思えるけど、これまでのところで言えば、まだ自分には言えない言説かなって思う。力点を置くに値するだけのものが沢山「本の記憶」にはあると思うのだ。すごい人達がすごいことを言っていて、どんだけ役に立っただろう、これからも役に立つだろう、憶えておけたらよい方に進むだろう、って思えてしまうのだ。
 数日前に書こうとして書けなかった本の感想を書こうと思い、なんで本の感想を書こうと思っているのか、ってことを書こうとしただけで、こういう話になって、むしろ、本の感想はどうでもよくなりかけていた。危ない危ない。
 にしても本当に思う。エビングハウスの忘却曲線について思う。ユニクロの社長だか会長の本を読んだのは数日前である。にもかかわらず、内容はかなりぼんやりしてきている。読み終えた直後にいろいろ考えていたことを思い出せるのだけど、その時にあった「脳裡の残っている本の内容」は、もっと沢山で、明瞭で、有益なものがいっぱいあった、って印象があるのだよな。あれがほとんど消えている。いやー、だからやっぱり、本の内容は極力憶えておきたいよね。思い返して、こんなに怖く思えるほど、数日で忘れちゃってるんだから、忘れないようなシステムを作ってみたって、全然いいと思う。
 というわけでユニクロの話です。
 柳井正『一勝九敗』を読んだ。以前から持っていた。読んでなかった。
 ちょっと仕事でいろいろ迷いがある。迷いというかなー。なんていうんだろう。仕事って何なんですかね? っていうことを改めて思い始めている。仕事の定義じゃなくて、今日一日何をしたら「仕事をした」ことになるのか、っていうことがわからないのだ。自分に求められているものは何なのか。仕事というものについて一般的に求められているものは何なのか。仕事ができる、っていうものを目指そうとするなら、結局、何ができればいいのか。
 結構わからないのだよな。利益を出せばいい売上上げればいい稼げばいい、みたいなことを思うのは簡単なんだけど、具体的に何を今日するか、ってことを考え始めたら、そこには辿り着かない。逆算してもよくわからない。明確な答えがあると思うなって言われるかもだけど、明確な答えを求めてるわけじゃなくて、例えばでいいので、指針のようなものが欲しい。いや、指針すら欲してなくて、もう根本的に全然わからないので、何でもいいから情報が欲しい。指針には勝手にする。
 目先の効率の良さみたいなものはわかります。むしろそれしかわからない。短い単位で目の前の「何か」をやるとき、それをすごく効率的にやるような、そういうのはわかる。でも、仕事ができる、ってそれではないでしょう? いや、それも含むのかな? けど、それだけでいいわけではなさそうだ。
 長期的な視野でどうにかしていくってことができないんだよね、って思うのだ。
 長期的な視点で見続ける癖が全然ないし、なので、長期的なスパンで目標を立てて進めていくことが得意じゃないし、長期的な視点で見た時に、どういう風にやると、長期的な目標を立てたことになるかもわからない。ほとんど見ようとしないし、見ることがあったとしても、そこで何を思えばいいかわからないから、うろうろして終わる。
 ていうようなことを考えていて、仕事できてるっぽい人の話を聞きたくなったのだった。
 ユニクロの柳井さんのお話はまたにしよう。