ダンダダン
ジャンププラス連載の『ダンダダン』が基本的には開始当初からずっとおもしろい。更新日の火曜日が毎週楽しみだ。が、ストーリーがいまいち前に進んでいってくれないというか、スカッとするだけで謎の解明には向かってくれないというか、言ってしまえば、つどつど迫ってきたことに対処しているだけで、目的や枠組みがまるで見えてこないところは、少し気になる。なぜ戦っているのかわからないし、なにを目指しているかもわからない。話がどれだけ拡がっていくのかの予想もつかない。
あえて進めない方針なんだろう、と感じているところはかなりある。意識的に停滞させていのかなと思っている。巧みな"じらし"というイメージだ。ただ、「かっこいいシーンは作れるけど筋の通った物語は構築できないってだけなんじゃないの」というツッコミも見かけて、なるほど、そういう解釈もあるか、とは学んだ。いわれてみればそうなのかもしれないと思える場面もあった。いずれにしても真相は不明だが。
短編的な面白さで見ればたしかに極めて上質だ。けれど、ただただ魅力的な新キャラクターを出して、キャラクターの周辺と過去におおきな事件を起こし、そして、その場その場で、ただ見栄えのよい解決をはかっているだけじゃん、と言われたら反論はしづらい現状だ。登場人物と背景設定だけがいまのまま増えていき、どんどん話がふくれあがっていったときに、うまくたためるのかについても、不安には感じる。それこそ、どこかで連載休止してしまい、いずれ未完に終わるケースだってありそうだと思えてしまう。
という疑問は持ってみたものの、これまでの総合的な筆力を見ている限り、やっぱり「溜めている」「秘めている」だけにも見えなくはない。いずれ破綻するような無駄打ちかつ逃げ腰な設定魔であるようにはあんまり見えない。買いかぶりかもしれないが、なんとなく、物語の背後に見え隠れする思考に、丁寧さと繊細さがうかがえる気はするのだった。いずれ積み重ねた設定を美しく爆発させてくる日がくるんじゃないか、となんだかんだ期待はしている。
綿密で愉快な設定を多数用意して振る舞ってくれる。各種設定による舞台上ででキャラクターを活躍させる手捌きも鮮やか。矛盾に見える謎もどんでん返しも死ぬほどの窮地も手際よく適度なペースで魅せてくれる。そんな最高峰の下準備が感じられた物語のオチが酷いことも、もちろんこれまであった。ので、ぜんぜん油断できないというか、そうなったらいやだなあ、とは(ちょっと)思いつつも、楽しく読んでいる。