世界は称賛に値する

日記を書きます

夏の情婦(佐藤正午)

《★★★★》

夏の情婦 (集英社文庫)

夏の情婦 (集英社文庫)

「恋してる?」
「あ?」
「楽しいか? 一緒にいると」
「……まあな」
「つらくないか」
「それは、なんなんだ?」
「質問だよ、ただの。答えたくなかったら答えなくてもいい」
――P.31

▼短編集である。絶版だったと思う。二十歳、夏の情婦、片恋、傘を探す、恋人、の五編が収録されている。好きなのは『片恋』と『傘を探す』だろうか。前に同じ作家の『童貞物語』を読んだことがあって、題を挙げた『片恋』は『童貞物語外伝』とでも言えるような物語だった。背後にある物語だった。だから印象深かったのだと思う。悲恋を悲恋だと思わせない作家だよなあ、なんて思った。派手ではなく、しんみりできる。