世界は称賛に値する

日記を書きます

太陽の簒奪者(野尻抱介)P.173

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

《85点》

「患者は狂気でもないし、嘘をついている自覚もないんだ。論理がおかしいとも思わない。左右の大脳半球の連絡が損傷するだけで、俺たちの論理なんてのは簡単にマスクされちまう。人と話が食い違うのに、それをおかしいとも思わなくなるんだ。ビルダーの知能がどんな仕組みなのかわからない。俺たちにとって自明なことが、連中にとってもそうだとは限らないんだ。わかるか?」
 ラウルは亜紀の肩をゆすった。
「友好派も懐疑派も、どっちが正しいとも言えない。どちらが間違っているとも言えない。異星人ってのは人類の鏡なんだ。異星人が侵略者や平和の使者や神そのものだったりするのは、その時代の人間の恐怖や希望を投影してるにすぎない。それじゃ異星人の本当の姿は見えないんだ。あんたが何をすべきか迷ってるなら答は簡単だ。真実をつきとめることだよ。ビルダーを好きになろうとしちゃいけない。憎んでもいけない」
 ラウルは繰り返した。
「真実をつきとめるんだ、亜紀。あんたならできる。俺も手伝う」