- 作者: 野尻抱介
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/03/24
- メディア: 文庫
- 購入: 10人 クリック: 131回
- この商品を含むブログ (168件) を見る
《85点》
「患者は狂気でもないし、嘘をついている自覚もないんだ。論理がおかしいとも思わない。左右の大脳半球の連絡が損傷するだけで、俺たちの論理なんてのは簡単にマスクされちまう。人と話が食い違うのに、それをおかしいとも思わなくなるんだ。ビルダーの知能がどんな仕組みなのかわからない。俺たちにとって自明なことが、連中にとってもそうだとは限らないんだ。わかるか?」
ラウルは亜紀の肩をゆすった。
「友好派も懐疑派も、どっちが正しいとも言えない。どちらが間違っているとも言えない。異星人ってのは人類の鏡なんだ。異星人が侵略者や平和の使者や神そのものだったりするのは、その時代の人間の恐怖や希望を投影してるにすぎない。それじゃ異星人の本当の姿は見えないんだ。あんたが何をすべきか迷ってるなら答は簡単だ。真実をつきとめることだよ。ビルダーを好きになろうとしちゃいけない。憎んでもいけない」
ラウルは繰り返した。
「真実をつきとめるんだ、亜紀。あんたならできる。俺も手伝う」