- 作者: 加藤典洋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/10/08
- メディア: 単行本
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P.15
僕は断固として点数をつける。僕としても、添削して、評点をつけないですむならばその方が楽です。しかし、実際考えてみると、評点をつけない、というのは、ありえない。なぜなら、僕は自分から見て、いい文章、よくない文章、というものをもっている。もっていなかったらどうしてこんな授業が成り立つだろう。僕は、こういう文章はいいと思う、こういう文はよくないと思う。そういうことがなければ、少なくとも批評は存在できない。いや、ほんと言うと批評だけじゃなくて、文章を書くことに熱意を注ぐ、ということが存在できなくなってしまう。その熱意が、大きく言って美というものを成り立たせているからです。いいですか。いろいろあるよ、と言っていたら、美は存在できなくなるんです。