世界は称賛に値する

日記を書きます

▼念力密室の方がよりキャラクター的だ、と感じたことについてには、女性が主要人物として存在しているかどうか、という点も大きく関係している、と思う。念力密室(というか、西澤作品は大抵そういう面があるけれど)は、ラブストーリーとして読むことも可能であろう、と言えるくらいに、恋愛要素(しかし、そう表現すると、しっくりこない気もする。人間関係的要素というか、そんな言い方の方がまだ合うかもしれない)が絡む。なにしろ、主要人物の三人がすでに三角関係みたいなものなのだ、と言ってしまえるような物語なのである。そういう、事件そのもののパズル性とは無関係(まあ時には動機的に関係したりもするが)な登場人物たちの心情や変化の描写が、キャラクター的というか物語的というか、そういう印象を残したのだろう。対して『試験に出るパズル』は、主要人物が三人なのは同じでも、全員同年代の青年である。そして、たとえば恋愛を感じさせるような話は、慎之介のデートの逸話くらいのもので、ほとんどない、と言っていい。個人的には、念力密室の方が好みだ。パズル性よりも、感情の変化だとか人生の波乱だとか思考や信念についてだとか、そういったものの描かれた物語の方が、好きだからだ。私が《事件の持つパズル性をあまり重視しない》という点に関しては、物理的に緻密なトリックよりも叙述トリックの方が好き、というところにも、その傾向が現れていると思う。