恋物語(西尾維新)講談社BOX

恋物語 (講談社BOX)

恋物語 (講談社BOX)

 俺は同じ嘘つき、同じ詐欺師とは言っても、気弱で根暗な戯言遣いや、女装趣味の陰湿な中学生とは違って、物語を語る上での最低限のフェアプレイという奴さえ、守る気は更々ない。
 卑怯千万ライアーマン精神にのっとりアンフェアに語ることを誓う。
 好きなように嘘をつくし、都合よく話をでっち上げるし、意味もなく真実を隠したり、真相を誤魔化したりする。
 奴らが呼吸をするように嘘をつくのだとすれば、俺は皮膚呼吸するように嘘をつく。
──P.13

《80点》

▼▼語りがほんとうかうそか、を「疑いうる可能性」が明記されていることによって「救いがありうるかもしれない」を見出せるような物語は、かなり好きかなと思った。疑い続けられてしまうような多重嘘程度はむしろ歓迎って話で、だから、結局、何を信じてよいのかはわからなかった。わかるように書かれていたかとは無論思う、んだけど、真相だと思わせるところこそが嘘なのだろう、っていう雰囲気にはやっぱりなる。
▼▼まあ西尾維新作品では頻繁に見かける──普段から際立っている匂いであって、と同時に、物語全般が抱く語り手や機構をいかに信用しうるかバナシなんかにもできるのだろうけど、まあ、明示的に「疑っていいだけの怪しさがあるよ」と書かれている、っていうことについて、現状では考えているのだった。
▼▼物語シリーズって最近は若干薄味な気がするな、なんて思っていたところを踏まえて言うと、微妙な味わいの違いを喰らいすぎて濃さや薄さがついにわからなくなった、的な混乱と戸惑いがあるようなないような読後感だった。不満的な指向ではまあない。
▼▼物語としては第一シーズンが好きすぎるんだよなー。というか、初期作である化物語と傷物語での阿良々木暦が好きすぎる。超人なのだけど超人好きなので、妥当な嗜好とは言える。第二シーズンというか偽物語以降に関しては、物語に対してというよりは、諸々挑戦している姿を垣間見つつ、新しいことをやっているなー、という感銘を受けつつの読書経験だったとは言いたくなる。物語好きー、キャラ好きー、っていう楽しさとはズレてしまった。っていうのには不満的な指向が少し混じってるな。まあよい。続き待ちだ。