【1】思考する物語(森下一仁)
思考する物語―SFの原理・歴史・主題 (Key library)
- 作者: 森下一仁
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/01
- メディア: 単行本
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そもそも、なぜSF論をやってみようなどと思ったのか。そのあたりから。
もちろん、SFが好きだということがあった。単に好きというだけでなく、SFは自分にとって特別な意味があると感じていた。それを知ると知らないとでは人生観の根本的な何かが違ってしまう──そんな作用を、SFは私にもたらした。
しかし、その理由がわからなかった。なぜSFがそれほどの魅力を持つのか。自分でも説明のしようがなかった。
色々なことを考えた。
SFの文学的価値と関係があるのだろうか。だとすると、SFはどういう文学なのだろうか。
リアリズムではない。寓話に近いところもある。人生の意味を抽象化した物語が寓話だと思うが、SFは非現実を装った現実認識なのかもしれない。でも、それだけではないような気がした。文学的にさほど価値があると思えないSFだって、何やら凄い感動をもたらすことがあるではないか。
別の方向からのアプローチしてみた。
SFに夢中になったのは、やはり何といっても学生時代である。受験体制の中で過ごした息苦しさを思うと、SFに求めたのは現実逃避の息抜きだったのかもしれない。直面すべき課題から目をそらす絶好の素材としてSFがあったのではないか。
しかし、それなら別にSFである必要はなかった。ミステリでも良かったし、冒険小説でも良かったはずだ。さらにいえば、小説である必要もなかった。映画でも、登山でも、恋愛でもかまわない。
他の何かではなくて、なぜSFだったのか。その理由を知りたかった。▼▼最初に知って、評判を辿って、楽しそうすぎ、って思って買った。改めてもうサイエンスフィクションが好きだ。説明が好きなんだと思う。理屈が好きなんだろう。理屈で新しい世界を構築してくれるなんて衝撃的に素晴らしいんですけど! みたいな! なんてことを、サイエンスフィクションに対しては、結構頻繁に思っていて、というところから始まる新たな説明が楽しくないはずがないよなあ、と。切り口鋭いならなおのことだ。