▼ずっと意識してしまっているのは、知らなかったがゆえに為しえた奇跡のようなひらめき、と、知っていたからこそ乗り越えることのできた創意工夫、では、果たしてどちらのほうがより『素晴らしいもの』なのだろうか――どちらのほうを重視すればより『素晴らしい結果』を残すことができるだろうか、というようなことだったりするのだと思う。このあたりの思考はおそらく、天才に努力は勝てるのか、というような疑問の変形なのだろう、と考えていたりもする。▼比較する方法なんてない、ということは無論理解しているつもりだ。天才と努力の境界線をはっきりさせる術なんて、厳密にはやっぱりないように思えるからだ。が、でもちょっと怪しいかな、と思うこともある。おのれの思考の裏側に存在している『天才』と『努力』の概念をはっきりさせ、きちんと整理整頓し、天才とか努力とかいうものが人間の中でどう組み合わさっているのか、を改めて理解すれば、別経路から『こういうことだったのか』という境地に辿り着けるような気もするからだ。
