世界は称賛に値する

日記を書きます

我が絶望つつめ緑

我が絶望つつめ緑―魔術士オーフェンはぐれ旅 (富士見ファンタジア文庫)

我が絶望つつめ緑―魔術士オーフェンはぐれ旅 (富士見ファンタジア文庫)

P.84

 その朝日が、普段の朝日となにか違う点があったというわけでは、決してない。
 もしも、黴びて重くなったカーテンを開け、暗かった寝室に黄色い朝日を吸い込ませることを禁じられれば、驚いた者もいただろう――だがそういったことはない。夜通し騒いだ結果として床に散らばったゴミや灰を適当に壁際に寄せることも、窓のすぐ下に集まっている浮浪者を追い払うことも、また一日生きなければならないことを我慢するため煙草に火を点けることも、なにひとつとして制限は課されなかった。
 だが、そのいつもと変わらない朝日の中で、アーバンラマ市の人々はあるものの出現を受け止めなければならなかった。
 それははっきりとした異変だった。