あたらしい戦略の教科書(酒井穣)

あたらしい戦略の教科書

あたらしい戦略の教科書

 種戦略によって生まれる「戦略という旗」は、フィードバックやアイデアが集まる中心軸になります。
 それはある種、どんな食材が入るかわからない「闇鍋」のような怖さも持っています。しかし、受け皿となる鍋、すなわち「戦略という旗」のない組織では、フィードバックやアイデアは、ウエット情報として、どこかで誰かに大切に保管されてしまい、大規模にシェアされることはありません。
 組織にとって戦略がなくてはならない本当の理由はここにあります。
 日々ルーティンワークをこなす既存の組織に「戦略プロジェクト」という別の公式な組織をオーバーラップさせることで、組織内のおけるウエット情報のフローを活性化させることができます。
――P.133

《★★★★》
▼戦略論の初歩を説明するのが狙いだろう。戦略に関する心構えを説いていて、問題なく巧みだ。語りはわかりやすい。切断面も思った以上に鋭かった。▼第一章で「戦略」を定義している。定義するにあたり「現在地」と「目的地」と「最適ルート」という概念を利用していて、同時に、概念ごとの性質を説明してもいる。現在地は頻繁な変化があり、最適ルートは現在地の変更に合わせて変更が必要になり、目的地は変わりにくいが変わるだけのことが起こるとびっくりするほどおおきく変わってしまう、という感じだ。あと、戦略は改善しながら育てる必要があることとか、戦略を描こうとする精神自体が持つ効果など、戦略自体が持つ性能についても語っている。▼あえて苦言も書いておこう。断片的注意が多いような印象は少しだけあったりする。脳裡の情報を整理すると、断絶じみた繋がりを感じてしまうところがあるのだ。構築するにあたっての注意事項は教えてもらったけど、構築するための細かい順番とかは教えてもらえなかったー、みたいな雰囲気かな。単にケースバイケースなんだろうか。ま、可能性はあるだろう。▼終盤で「駄目なとこ」を記してしまうと、読み終わりの印象が悪くなってしまいそうなので、おもしろかった、と最後にまた繰り返しておこう。戦略論の初手としてはかなりよい気がする。