世界は称賛に値する

日記を書きます

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義(廣野由美子)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

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 しかし、テクストを取り囲んでいる世界を遮断し、ひたすら作品の内側だけを眺めているのは、狭い読み方だ。ましてや、たんに印象や直観のみに頼って作品を解釈するのは、貧しい読み方だと言わねばならない。私たちは、批評理論という方法論を持つことによって、自分の狭い先入観を突破し、作品の解釈の可能性を拡大することができる。たしかに、それは容易なことではない。他人が作った理論を理解しようとするとき、私たちの頭の中でそれを鵜呑みにすることへの抵抗が生じるからだ。他方、その理論を用いることによって小説の新しい読み方が発見できたときには、喜ばしい。この苦しい抵抗と喜ばしさとの間で行き来しつつ、小説を読む力を研ぎ澄ませてゆくことによって、私たちの印象はさらに鮮やかなものへ、直観はさらに鋭いものへと磨かれていくだろう。「読む」ということの土台として、読者の印象や直観が大切であることに変わりはない。