世界をよくする現代思想入門(高田明典)

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

世界をよくする現代思想入門 (ちくま新書)

P.50

 これはどうしたことでしょう。「論証しえないこと」にこれほどまでの「確信」を持てるのは、何か別の理由があるはずです。
 私たち人間は、「あるパターン」を経験すると、「そのパターンを学習する」という奇妙な性質を持っています。そして、不思議なことに「そのような性質を持っている生命体である人間」が生み出した「論理」によっては、その「性質」は解釈しえないのです。「因果律(ある原因があって結果が存在する。そして同じ条件が原因として存在する場合には、同じ結果が発生する)」は、「自然は均一である」ということを前提としていますが、そもそも「自然が均一である」ということは、「本源的な性質として、私たちの思考の仕組みの中に組み込まれている」ものでしかなく、その「正しさ」は誰にも論証できません。端的に言うならば、「ここに基盤が存在する」のですが、「その基盤の正しさは、論証できない」のです。したがって、私たちは「自然な均一である」という「基盤」を、何の根拠もなしに、「ただ信じるほかはない」ということになります。というよりも「信じざるを得ない」わけですし、事実「信じている」わけです。これが、ヒュームの懐疑論の「驚くべき」帰結です。