- 作者: 金城一紀,矢ヶ瀬智子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 単行本
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《90点》
「とにかく、俺は自分の頭で考えて、目で確かめて、まえに進んだんだ。ほかの車にぶつかる可能性も、人を轢く可能性もないと思ったからな。でも、たいていの奴はあの場面でも信号が青に変わるまで待つだろう。それが世間にまかりとおってる常識だし、百パーセントの安全を確保できるし、それに、誰かに信号無視を見られて非難されることもないだろうしな。要は、信号が変わるまで待ってるほうが、めんどくさくなくて楽なんだよ」
車がまた赤信号で停まった。今度は人もいたし、車もまえを横切っていた。アギーはわたしを見つめて、続けた。
「俺たちを動けないように縛ってるのは信号機じゃなくて、目に見えないもんなんだよ。中川はその操作の方法がうまいんだろ、きっと。でも、俺とか南方とか舜臣とか菅野とか山下は、自分たちの目と頭が正しいって判断したら、赤信号でも渡るよ。で、おまえはどうするよ?」