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▼悔しかった、というか、驚いたのは、表現のおもしろさ、といったものをきちんと考えていたらしいその頃の文章が、実際に読みやすく、おもしろかったこと、だ。いいスタイルだったと思う。森博嗣の影響下にあるのが、かなりの部分明らかで、そのあたりに苦笑したくなるような感情を覚えたことも否定できないが、それでも、頑張った、と言ってやりたくなるような努力が見えたことも否定できない。この文章を執筆する前に、ではその頃のスタイルを再現してみよう、というか、今でもおもしろくできるのか、というような意識を持ったのだけど、結果としては、あまり再現できていない、と思う。そこにあるブランクは簡単には埋められないらしい。もっと軽快な文章を書いていたし書けていたはずなのだが……。ただ、前述したように、スタイルとして森博嗣の文章によく似ているのは確かで、なんとなく、そのまま再現するのはどうなのか――やるならワンランク上を目指そうじゃないか、みたいな気持ちを持ったのも事実で、そのへんの葛藤と気負いが、結局は軽快さに結びつくきっかけをもたらさなかった、とも言えるかもしれない。