基礎からわかる経営組織
ビジネス関連書ってほんとうにあたりはずれが大きい。手なりというか、乱暴というか、さほど熱意の見られない弛緩した書き手もいれば、気づきや手さばきを世の中に共有することが世界をよくする一助になると信じるアグレッシブな書き手もいると思う。やる気がないのか、めんどうなのか、認識や分析をぜんぜん深掘ってくれない書籍もあるし、気分レベルの話で終始してしまう書籍も少なくない。タイトルだけじゃ「よさ」を見極めづらいところも、混乱を後押しているのかなとは感じる。媚びていてしょうもなさそうなタイトルに見えたとしても、実際、読んでみたら、裏をかかれることがある。当然、逆もまた然りだ。結論、読む前の予感はたいして当てにならないなと思うようにはなった。
『基礎からわかる経営組織』(松本久良)を読み始めた。前書きの時点で、めちゃくちゃよい本っぽいな~、って手ごたえは得られた。賢明さと誠実さが高い水準で両立させられている雰囲気があった。真面目だった。熱意があった。丁寧だった。整理がキレイでわかりやすかった。
「勉強用のテキスト」として紹介されたものだったので、そもそも舐めてかかっていたこと自体、おかしくはあったんだと思う。反省はしたい。ともあれ、初っ端から、堅実な積層を目的にした、油断のないことばが並んでいて、嬉しくなった。信頼感のある文章が読めるのは、率直にいって、気持ちもよい。知的・学術的な誠実さに欠けるような、投げやりで、表面的かつ一本調子なテキストだってなくはない中、ひとことひとこと、こんな丁寧に、真面目に、物事の側面を描きだしてくれて、隙間のないように説明してくれることがあるんだな、と驚かされた。
「この本は、こういったゴールを目指して書き上げた本であり、こういった価値を持ちうるよう書いたし、そのために、こういうステップで進めていくようにしたが、結果として、こういった懸念や不足があるのは間違いないので、注意いただきたい。また、このステップとこのステップはこういう繋がりになるよう書いたが、目的に応じてこういった迂回も可能である」みたいな、全体像にかかわる説明・注意を教示してくれながら、さらに見るべき方向まで示してくれている時点で、信頼せずにはいられない雰囲気はあった。
学ぶ、知る、理解する、といったこと踏まえた、丁寧な前置き(が書かれた書籍)が、ほんとうに好きだ。書籍自体の企画の切り口は鋭くて、要点と解説文には細部まで根気強く検討を重ねた気配があり、背後に見え隠れする作者のメッセージからは熱意と誠意が感じられる。とにかく気持ちよいな、って思える。