人類史上だれひとり立ち入ったことのない密林の奥地(と設定された場所)にだって、突然、使い古された人間の家を登場させることはできる。物語なら、ちょっと無茶な展開や描写であっても、容易にできる。やるだけならやれる。
"論理的におかしな"ものが、物語によっては、けっこうな頻度で顔を出す。すでに記述された歴史や文化、あるいは生態系、心理や知性を踏まえて、そこからロジカルに導出してみせるなら、ちょっと無理のあるような、出来事、動作、組織、建築物や地形、動植物などが、サクッと登場してきたりする。
作者によって練りあげられた緻密な前フリなのかもしれないし、経緯や状態なんて意識もせずに乱暴に描かれただけの結果なのかもしれない。が、後者の場合だと、そのうちに「雑味」がどんどん目立ってきて(わざわざ用意したと考えるには違和感のある、細かい衝突ばかりが、目に見えて増えてきて)まあ萎える。さすがに無意味な世界に見えてくる、って言っていいかな。なんでこんなろくでもない世界をがんばって脳内シミュレーションしているんだろう……、といった気分にもなってくる。
丁寧に張り巡らされたミステリ的な伏線とかだと、ほんのり違和感を覚える言葉があったとしても、後ろ支えのしかたが、自然だ。フォローがうまい。やりっぱなしではないんだな、気づいてないわけじゃないんだな、って思える範疇に納めてくれる。ささくれだっているように感じない。結果として、嫌な気分にしないでくれる。逆に、なんでここ気にならんの?と思わされ続けると、世界からこころが離れていく印象だ。