世界は称賛に値する

日記を書きます

接触アタッチメントの5/2火

デッドマウント・デスプレイ/藤本新太・成田良悟(ヤングガンガンコミックス)

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とある異世界。『災厄潰し』と呼ばれる英雄シャグルアと、希代の死霊使い(ネクロマンサー)『屍神殿』が激突。世界の命運をかけた戦いの果て、戦場は光に包まれた。
そして現代の新宿で1人の少年が目覚めた。彼の名は四乃山ポルカ。首に深い傷を負って死んだ筈だったが、その体には別人の記憶が宿っていた。どうやら異世界での戦いの末に転生したらしい。全く違う世界の様子に戸惑うポルカだったが、彼は殺し屋に狙われていた。人殺しを楽しむ殺人鬼・崎宮ミサキの執拗な追撃に追い詰められるポルカ。だが、死の気配に満ち溢れたビルの中で彼は己の力を取り戻した。圧倒的かつ異質な力でミサキを殺したポルカは、彼が理想としていた「子供が大事にされる平穏な世界」で生きようと誓うのであった。
一方、転生先の異世界では無事だったシャグルアに、屍神殿の魂がこの世界から完全に消滅したとの報告が届いていた。それでもシャグルアの胸には一抹の不安が過る。屍神殿の魂は別の世界に飛ばされたのではないかと…。

前置きなしで『デッドマウント・デスプレイ』1巻を読んだ。原作を成田良悟氏が担当していることも知らなかった。ちょうどアニメ化のタイミングで、1巻だけが、Kindle unlimited(読み放題)の対象になっていたようだ。異様におもしろかったため、即座に2巻に手を出した(同じくキャンペーンで値引きされていたこともあり)。

前述した通り、『デュラララ!!』や『バッカーノ!』といった小説を書かれた、成田良悟氏が原作を担当している。読み終えたあとにそのことを知って、やはり滅法おもしろい作品を書く作家だ、とあらためて思わされたし、言われてみればたしかに強烈な成田作品の匂いがしている、とも実感させられた。

上質な群像劇として、登場してくる誰も彼もが、しっかりとそれぞれの事情をかかえており、むちゃくちゃな思惑も併せ持っている。そして、その中に、非常に強力な怪異なんかが混じっていたとしても、それを決して安易に最強には仕立てずに、なんというか、"最悪な人間存在"もまた、交えながら物語を成立させてくる。そのあたりの豪腕に、成田節を感じた。読んでいくにしたがって絡まり合っていく登場人物たちの意外な思惑にはほんとうにワクワクさせられた。2巻時点ではまだまだ片鱗しか見せていないのだろうけど。

ひさしぶりの成田良悟作品だった。とても楽しかった。おかげで『ヴぁんぷ!』シリーズが止まっていることも思い出してしまった。刊行が見事に止まっている過去のシリーズだ。悲しみを思い出した。あんなよいところで止まってるなんて鬼畜の所業だよと毎回思わされる。打ち切りなんだろうなとは思っているものの、特に刊行最後の展開が非常におもしろいものであったため、あまり打ち切りだとは信じたくないという気持ちがある。いつかワガママを通す的な形で(かどうかわからないが)、続きを読ませてくれたりするのではないか、という淡い期待はいだいている。

『デッドマウント・デスプレイ』は初っ端からの加速感もふくめてとてもおもしろかった。やっぱりこれだけおもしろい物語を描くひとなんだよな~。おもしろかったせいで『ヴぁんぷ!』の続きが読めない悔しさも強まったと思う。うーん、謎の対抗手段というか自傷行為で発散させるみたいな形になるけど、『ヴぁんぷ!』既刊分だけでも読み直してやろうかなあ。ヴぁんぷ!が読めないぶんでもないけど、デッドマウント・デスプレイはけっこう巻数を重ねているのは、嬉しいといえば嬉しい。楽しみが増えた。

デッドマウント・デスプレイ

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