世界は称賛に値する

日記を書きます

子育て脳研究3/1水

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

bookmeter.com

一般に、記憶力のいい人ほど、想像力がない傾向があります。なぜなら、記憶力に優れた人は、隅々までをよく思い出せるため、覚えていない部分を想像で埋める必要がないから。普段から「よくわからない部分を空想で補塡する」という訓練をしていないと、想像力が育たないのです。記憶力の曖昧さは、想像力の源泉です。


実は、記憶が正確だからこそ「百舌の速贄」は忘れられてしまうのです。この意味がわかるでしょうか。モズになったつもりで考えてみれば瞭然です。今、獲物を刺した枝とその周囲の風景を、写真を撮るように「パシャッ」と正確に覚えたとします。でも、枯れ葉や枯れ枝は風が吹けば飛んでいってしまいます。すると、それだけで写真の記憶とは照合できません。つまり、「このエサは自分が刺した獲物ではない」と判断してしまう。 記憶は、正確すぎると実用性が低下します。いい加減で曖昧な記憶のほうが役に立つのです。


「ヘッケルの反復説」は、記憶力についても当てはまります。記憶スタイルも進化の過程をなぞるように変わっているからです。幼い子どもほど記憶力が優れているように見えるのは、誤解を恐れずに言えば「まだ進化的に初期の動物みたいなもの」だと解釈することができます。子どもは「正確な記憶」が得意。だから、まだ充分に有用性を発揮しきれない。それが成長によって、大人らしい「曖昧な記憶」に成熟していくわけです。

池谷裕二『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』を読んでいる。脳研究者である著者が、自身の子育てエピソードを下地に、脳研究の知見を語る。新鮮な話が多くとてもおもしろい。

ぼんやりした記憶こそが人間の特性であるという項を読んだ。完璧な記憶は応用性に欠け、曖昧であり抽象的であるからこそ適用範囲が拡がる、という視点だ。極めて記憶力がよい人物は友人や職場にもいて、恩恵や成果というものを考えたときに(安易な想像ではあるものの)、憧れをいだくこともあったのだけど、当然ながら、やはりメリットデメリット両者の側面があるものなのだな、と認識を新たにした。これに限らず記憶の話はどれもほんとうにおもしろいな。