- 作者: 上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/23
- メディア: 単行本
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膨大にして複雑な世界を前にして、西洋はそれを解き明かそうとした。一つの事実を得るならば、論理の力によって因果を辿り、少なくとも、もう一つの事実を明らかにすることができる。そしてもう一つ、さらにもう一つ。
ただ一つ、確実なものがあればよい。そうすれば、すべてを明らかにできる。論理の力によって、神の存在を証明することができる。
本当にそう考えた哲学者兼幾何学者がいた。一つ確実なものがほしい。わが目に映るものは、悪魔の技たる幻かもしれない。しかし、いまこれを思う自分が、ここにあることは間違いない。こうして、「我思う、ゆえに我あり」といったのがデカルトであり、その『方法序説』(一六三七年)だった。
そこから、理性つまり論理によって、すべてがわかるとする近代合理主義としてのモダンがはじまった。
いまから思うならば、『方法序説』とは、謙虚を装いつつ何という自信であろうか。フランスの学士院などは、科学とは因果関係についての知識であるとまで定義した。デカルトの弟子たちにいたっては、量で測れないものには意味がないとまで結論づけた。
デカルトが求めたものは万物のための普遍学だった。これすべて、理性への確信あるいは過信というより他なかった。
――P.62