世界は称賛に値する

日記を書きます

じょうずな勉強法(麻柄啓一)P.123

じょうずな勉強法: こうすれば好きになる (心理学ジュニアライブラリ01)

じょうずな勉強法: こうすれば好きになる (心理学ジュニアライブラリ01)

 このような経過をたどって、今の私は、地面に足をつけて電線に触った場合も、電車もトロリーバスも、電気の流れは回路になっていることを知っています。これは百科事典に書かれていてもよい〈客観的な知識〉です。しかしこの知識は、〈自分の世界〉をくぐることなく頭の中にスポッと移植されたものではありません。電気の先生から「電気は地面を通ってもどる」という話を聞いたときの驚きを今でも思い出すことができますし、居酒屋でトロリーバスについて問われたときのショックも思い出すことができます。私にとって回路の知識は、そういう〈自分の世界〉と密接に結びついて成立したのです。そういう「日記」を作るプロセスが私の勉強だったのです。
 しかし、これらの知識をこれからどこかで使っていくときには、しだいにこれらの驚きやショックはよみがえらなくなることでしょう。電気回路の勉強に絡みついていた〈自分の世界〉はだんだん落ちていき、回路の知識は「日記」から「百科事典」へと変わっていくのです。
 だから多くの生徒や大人は誤解するのです。学ぶというのは頭の中に「百科事典」を作ることなのだと。しかしここで大切なのは、いきなり頭の中に「百科事典」を作ろうとしてもダメだということなのです。
――P.123