世界は称賛に値する

日記を書きます

パッチギ!

パッチギ ! スタンダード・エディション [DVD]

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 喧嘩や暴力で何かを変えることなんてできないし、でも喧嘩や暴力で何かが変えられたりもすることだってあるのかもしれないし、青春や若さが総じて素晴らしいわけではないけれど、結構素晴らしかったりすることだってもちろんあるし、音楽で戦争や差別を無くすことなんて無理だけど、でも音楽が戦争や差別を無くすことだってあるのかもしれないし、愛や恋がすべてを解決してくれたりなんかはしないけれど、愛や恋がすべての解決になったりすることだってあるのだと思う。というような、さまざまな良さと悪さをどちらも否定することなく混ぜ合わせた『ごった煮』のような映画だ、と感じた。物語のどこを取り出しても、たぶん、それなりの思考が行えるだろう、と思える。描かれている世界が複雑なままだからだ。物語化に際してあまり単純化を行っていないからだ。というところにひどく感心した。慣れというのは『単純化すること』を含むから、住み慣れた世界の内部だけで日々暮らしていく、というのは、時に『単純化された世界で生きていく』ことを意味するのだと思う。つまり私は、複雑で広大な世界から目を逸らして見慣れた狭い範囲だけを見ることで、人間は無意識的に世界を『単純なもの』だと思い込んで生きていくことができる、とか考えているわけだ。という思考を背景にして、世界の複雑さをきちんと描いてその複雑さの中で主人公を迷わせる、という物語を眺めてみると、あまり世界を単純に捉えんな、ということなのかな、なんて考えられたのだった。構築できた解釈だ。