世界は称賛に値する

日記を書きます

哲学はこんなふうに(アンドレ・コント=スポンヴィル)

哲学はこんなふうに

哲学はこんなふうに

  • 作者: アンドレコント=スポンヴィル,Andr´e Comte‐Sponville,Corinne Quentin,木田元,コリーヌカンタン,小須田健
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 単行本
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログ (11件) を見る

《90点》

 叡智とは、最大限の明晰さのうちで捉えられた最大限の幸福である。ギリシア人に言わせれば、それこそが幸福な人生なのだが、その人生とはあくまで人間的な人生である。言い換えれば責任をともなう、人生と呼ぶに値する人生である。それを享受すればよいのだろうか。それはもちろんだ。それを楽しめばよいのだろうか。できるかぎりそうすべきだ。だが、どうやってでも楽しめばよいというものではないし、どんな犠牲を払ってもよいというものではない。スピノザの言葉を借りれば、「喜びを与えてくれるものはすべてよいものである」。だが、すべての楽しさが等価なわけではない。「あらゆる快楽はよいものだ」とエピクロスは言った。だからといって、どんなものでも追いかけるに値するわけではないし、どんなものでも受け入れられるわけでもない。だからこそ、選択し、長所と短所を比較しなければならず、つまりはこれもエピクロスの言ったように、判断しなければならないのだ。叡智とはそのためにこそ役だつものであり、哲学もまた、そのためにこそ役だつものである。哲学は暇つぶしのたねでも、かっこよく見せるためのものでも、さまざまな概念で遊ぶためのものでもない。おのれの生命と魂とを救うためにこそ、哲学するのだ。