世界は称賛に値する

日記を書きます

『彼女は一人で歩くのか』を買った/読み終えた

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? (講談社タイガ)

「どうしてだろうね……。それは、今でも解決を見ない問題の一つだ。人間以上のものは存在してはならない、という簡単な言葉に集約される。しかし、そんな話をしたら、人間よりも力の強いもの、正確に速く計算をするもの、人間よりも友好的で、悪事を働かないもの、人間よりもエネルギィ効率が良くて、社会に対する貢献度が高いもの、いくらでも存在するんだ。ただ、それがコンパクトにまとまって、見た目が人間に近づくほど、抵抗する人たちが増える。宗教的な問題だと言いだす連中が今でもいる。神に対する冒涜だとかね……。今まで冒涜の限りを尽くしてきたのに、今さらだよね」
「保身だということですね?」
「まあ、そうかな。なんとなく、立場が脅かされる、という感情だと思う。まあ、そういう人が多いから、私の研究に助成金がつくわけで、ありがたいことだとは思っているよ」
「先生は、何故この研究を始められたのですか? どういった動機だったのでしょうか?」
「ウォーカロンを見抜いてやろう、というつもりは全然ない。そうじゃなくて、ただ、人間らしい思考というものの本質を知りたかったんだ。人間はどんなふうに考えているか、ということが、つまり人間とは何かという問題の答になると思った。そう思ったことが、もう既に人間らしい思考だから、これはネストだ。とにかく、それをいろいろな方面から突き詰めていくと、結局、ぼんやりとした枠組みのようなものが見えてきた。それが、まあ、今到達しつつあるレベルだね」
「でも、それが明らかになれば、それもまたソフト化されて、ウォーカロンが人間に近づくことになりませんか?」
「そうなる」
──P.104 第2章 希望の機関 wishful engine

▼▼無意識に望んでいたものを差し出して貰ったような気分になった。快かった。やっぱり、新しいものを思いつけるだけ書いていって欲しい、と著者に対して思う。▼▼新創刊した「講談社タイガ」の一冊だった。