星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会、を観覧してきた

▼▼芦花公園駅に初めて訪れた。人生経験的に京王線にはかなり馴染みがない。駅名も初めて聞いた雰囲気で、けど字面が好きだった。文字見た目の比重が好きだ。▼▼芦花公園駅には「世田谷文学館」があって、現在は『星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会』が開かれている、とツイッターで見かけた。展覧しに行ってきた。芦花公園駅から世田谷文学館に向かう道のりの途中に「成城石井」があったので、見終えたあとの帰り際、妙に昂揚した雰囲気に乗っかって、謎のジュースを買ってみたりもした。
▼▼展覧会は楽しかった。極めてよかった。▼▼空想と現実の間を隔てる「扉」に手を掛けさせてくれるような品々が幾つも丁寧に飾られていた。
▼▼クラフト・エヴィング商會の著書は、もともと、空想と現実のあいだを気持ちよく曖昧模糊にしてくれるような言葉と絵と品々に溢れている印象なのだけど、今回の展覧会では、同じ種類の雰囲気を、より具体的に、より強く、味わうことができたかと思う。具体性のよさを存分に味わえた。ここまで具体的かつ実際的な品として置かれていると、空想世界や異世界と現実の境目に対して真面目に迷い始めてしまうなー、なんていう思考と気分の動きがだいぶ楽しかった、と言える。笑った。
▼▼途中で、憶えきれなくなることが凄く惜しくなって、勿体なくなって、せめて三個くらいは「好きだ」と感じたものを憶えてみせよう、って決めて、改めて最初から見直して行ったりした。最終的には「A」「星」「サリンジャーに背いて」「『変身』の変身」を記憶した。▼▼最後の最後で展覧会図録があると知って、即座に買いに向かった。
▼▼図録で見直して行くと「猫の魂」がほんと驚くくらいに恰好良かったのを思い出せるし、口の中で溶ける詩「エピファイト」なんてもう好きじゃないわけないし、これってば空想と現実の数直線上ではどのあたりに位置してるんだろう、って「角砂糖の包み紙」見ながら思ってたのも思い出せたし、まだまだ好きなものは沢山あった。もともとフォント好きなせいか『料理通信』の綺麗さに驚いたりもしていた。なぜか『「手乗り象」の絵葉書』の説明文が脳裡に強く残っていたりもする。
▼▼クラフト・エヴィング商會は、装丁家として好きなところが非常におおきかったのだけど、今回の展覧会を楽しんだ結果、著書ももっと読んでみたいなと思った。
▼▼順路最初の冒頭文がすでに楽しくて、腕組む気持ちでぜんぶ読み切りつつ、展示の初めである道々に置かれた箱を一つ一つ丁寧に眺めていく。三つ憶えよう、って考えながら見終えて、横の細い通路に入り、通路途中の「作業室」に足を踏み入れる。この作業室がもうほんとうに楽しくて、飾られた清刷りの美しさに目を奪われたりしていた。綺麗に貼られた発想メモも熟読してしまった。妙に混んでたのに見終わったあと振り返ってみたらしばらく誰もいなかった。かならず必要、っていうメモが妙に印象深かったな。あまりに堪能しすぎて、飾られてあった自転車や看板なんかもじっくり見ちゃってから、音声ドラマや著書が並ぶ空間に移って(ここの『アゾット』も精妙で素敵だった)から、装丁した書籍が並ぶ終幕の場に向かった。装丁家を知らずに見かけて「これ装丁が素敵だー」って思ってた書籍が思ったより沢山並んでて、ほんとうに好みのデザインなんだよなあ、って思わされた。展覧会図録があることを最後ここで知って、買おう、って決めた。
▼▼最後の最後に、常設展の「旅についての断章」を少し眺めて、図録を買って、閉館に合わせて帰路についた。閉館ギリギリになってしまったので館内ライブラリーで書棚を眺められなかったのが心残りかなー。美術館の図書室ってものすごく好きなのだ。好きな書物がびっくりするほど沢山転がっていて、本があるところ、としては最も好きかも、とすら言える。常設展では「ムットーニのからくり劇場」が見れて、よかった。