《83点》子ひつじは迷わない-うつるひつじが4ひき(玩具堂)を読み終えた

子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき (角川スニーカー文庫)

子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき (角川スニーカー文庫)

▼▼相談室系日常の謎な短篇ミステリの定型を崩して、シリーズ初の長篇である。館物と言える。言えるけど、いわゆる館物的な閉塞感や緊張感は薄めかなー。環境と人間関係に対する変質のほうが割合多めだ。割かれていると思う。試行錯誤における力学はこれまでの流れを汲んでいるしとも思う。▼▼デレないツンデレこそ最強のツンデレである、っていう言説が最近理解できてきた気がする、ほど、仙波明希が手強い。褒めてる。帯の「仙波がついにデレる」がぜんぜん理解できなかった。って言いたくなるほどだ。指摘箇所不明すぎである。でもよかった。別にこれでよい。だからこそ、ほんの一描写、ほんの一台詞、に、凄く着目してしまうというか右往左往するというか一喜一憂するというか、なんかもうそれでよい。▼▼世界設定は拡がったと言える。妙な拡がりかとは思うけど、おもしろくしてくれれば、問題なしだ。女性陣もまたまた増えたわけけど、ぜんぶ活かせるのかな? 著者の腕前的には期待できる。ので期待しちゃおう。▼▼館と鏡の設定が佐々原仙波会長おのおのを巧く引き出したところは非常に強くあって、巧かった。なるたまの言葉を求める場面は、確かに、デレた、と言ってもよいのかもだ。星に感動できないまわりの台詞回しも好きかな。でもって、最後のなるたまのひねりは、かなりよかった。

「あなたはあまり鏡を見ない人ですから、御自分のお顔を造ることに慣れていないのでしょう。人は鏡を見て、自分を知って、本心と建前を引き離す調整をしていきます。でも成田さんは、鏡に習わず、直さず、自分の中から発する意志を直線的に表明します。
──P.108

 自分の手を見つめて、指を動かしてみます。指はわたしの意のままに動きました。自分の魂と体が繋がっている。最も身近な証拠。自分の顔を見ることはそれと似ていて、少し違います。現に物を見て、音を聞いて、食べ物を味わって、匂いを嗅いでる器官たち、それを内蔵するフレームを見る行為にはきっと、違う意味があると思います。
 鏡を見る──認識の土台を確認する行為。今のわたしたちには、それができません。
──P.153

 本当にそうです。そして、ここまで来たら勘違いも何もありません。わたしが成田くんに執着してしまうのはきっと、自分のとってあまりに都合の良い人格の持ち主だからです。わたしが思い切れないでいると引っ張り出してくれて、わたしの消極性が逆説的に肯定されるようなうかつな失敗を繰り返して。
──P.197

[★★★★][主人公が嫌いとか好きとか思えない][装置に見えるところはある][ので、ひっくり返しも期待してる][まあ強いて言うなら好き][かがまくら][万鏡館][墨鏡堂][山荘奇談][サトウ][黒須][寄絃芳花][寄絃参][白雪姫][お后様のその後][もやしにくっつく趣味はない][しるし][本当にいつもの状況][呼ばれた意味][蝉の声][定義しろ][迷うことを強制する館][吸血鬼][乙姫][松山鏡][エアークッションぱやきのさん][仙波明希の鏡][寄絃芳花の鏡][古代の鏡][チョウチョ]