子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき (角川スニーカー文庫)
- 作者: 玩具堂,籠目
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/01/29
- メディア: 文庫
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▼▼学園相談物ミステリ系小説。問題は学園相談室で飛び込んでくる、ってのは現時点では不動で、若干の単調もなくはないので、変奏は求めてる。不満と感じてはいない。のはまあ、巧いからだろう。▼▼第一話が楽しめたと明確に言える。凄い、って思った。新しかったと思う。素直に挑んでしまったし、出来栄えに感心もしてしまった。かぐやテスト設問も、最後のひとひねりも、だ。▼▼独特な描きかたをしてるな、と、女性陣に対して特に思う。明瞭にしなさが絶妙、みたいな印象だ。ツンデレっていうか真のツンデレというかと言える。比較的生徒会長の位置づけが好きかな。報われない可能性は高いけどまあむしろよい。▼▼安易に恋愛に落とし込まないあたりが素敵だ、と思っている。けど、恋愛にすぐ還元する物語を頻繁に見かけてるから対比で新鮮に見える、のもあるから、まあ微妙な状況だ。▼▼前巻からの繋ぎが巧いと思った。前巻の終幕から相談が始まって直接繋がるのかなと思っていたら、ほんのり一拍置いて、けど一拍で一エピソード作って厚み見せて、話を拡げた気がする。人物個人は進んでる。人間関係も進むのを求めてる。
「あのね赤谷……小説の読解問題というのは本当に作るのが難しいの。有名な大学の入試問題で、課題の文章の作者が解いてみたら不正解ばっかりだったって話もあるし。
それでも、明言されている箇所だけ訊く問題や使い古された過去の問題を使えば、解答が不安定になるリスクは避けられる。けど、先生はあえて授業の内容に合わせた新しい問題を作ったの」
──P.20
「でも……自信のないわがままを通すのは、悪いことなんでしょうか。これと言える根拠もなく、ただ漠然と、好きだから、したいからという理由で行動するのは、いけないことなんでしょうか?」
今度は、朝里さんが命題を突き付けられる番だった。
同時に、自分の感性を無価値なものと思い込んで、ずっと他人に合わせて生きてきた佐々原さんにとっても、切実な問いかけなのだろう。
朝里さんは、少なくとも表面上は平然としていた。
「悪い……悪いわね。正しくない。わたしはね、そういう、自分勝手な感情で順逆を違えるような奴が大嫌いなの」
──P.212
一見、ダメな妹が働く姉にたかっている図に見えるだろうが、それは半分間違いだ。我が家には独特のシステムがあり、親からの小遣いは全てわたしに与えられる。その代わり、妹にはわたしから小遣いを与えなければならない。
──P.150
だが、これで朝里さんが身の内に「物語」を取り込み、自分とソフトボールの関係(ありかた)について考えてくれれば──今日とは違う明日が見えてくるのかも知れない。
──P.245
[★★★★][問題文][ウエイトレス][妹][先生・ケンちゃん・お向かいさん・電卓さん][オム神様][邪道][偽物][甘えてる][自信][洞庭神君][自信のないわがまま][動機が不純][必然性]]バントの][起承転結を供えている物語がない][具体的な何かを持たない][常習性の偽り][鬼神に変わっていく夫を側で見ていて][佐々原巻なのかな][巧いテスト、妹登場、会長と喫茶店、佐々原一歩前進、みたいな]