世界は称賛に値する

日記を書きます

小説家という職業、と、小説道場Ⅱ

 やってもみないで! なんて、思ったり呟いたり言ったりすることは結構多いよなあ、と思った。わりとすぐ言いたくなるようになった。言いたくなる習性がついてしまった、と言ってもよい。
 やりもせず、触れもせず、なんていうか、遠目でなんとなく見えるだけのところの情報、とか、ジャンル等の印象を利用しただけの類推とか、そういう感じで、「詳しく知らない何か」を判断していることって、沢山あって、まあ、見かけることも、油断して自分でやってしまっていることもかなりあって、けれど、後々そのことによる錯誤や誤解に気づけることも多くて、なのでまあつまり、その反省もこめて、やってもみないで……、って思うことは多い、のだった。深い反省が脳裏に刻まれてしまっている、と言ってもよい。刻まれてしまうくらい、やってもみようともせず、文句言ってたり嫌ってたことがあって、けどまったくもって間違ってたなあ、と思ったことが多いのだった。
 小説について、いろいろ書いてきた経験からわたしはこれがいいと思ったよー!と書いている本を、最近2冊読んだ。
 森博嗣さんの『小説家という職業』と中島梓さんの『小説道場Ⅱ』だ。
 表面上は(表面上の問題だよなあ、たぶん、と自分は思った、ということだ)非常に対称的な二人で、これらを同時期に読めたことはおもしろいことだな、って思えた。森博嗣さんは「小説が好きなわけではまったくない。そもそもほとんど読まない。だから書けた」と断言している。栗本薫さんは「私よりたくさん書いた奴も、いいものを書いた奴も、売れた奴も、小説を好きだった奴もいる思う。けど、自分くらい「小説を書くのが好き」な人間はいない。私にとって小説を書かないことは「できない」ことだ」と公言というか強弁すらしてる。
 あ、途中から表記が栗本薫になってしまっているな。中島梓よりは栗本薫の名前のほうが何割かは見知っている度合いが高いせいだろう(同一人物だって最初は知らなかったしなあ)。が、いずれにせよ、どっちの名前にしろ、著書をほとんど読んだことなかったりするんだよなー。栗本薫(中島梓)さんの著書は「小説道場」だけ読んだことあります、って、結構稀有なんじゃないかと思う、って書いてみて、小説家志望とかで小説そのものよりも(よりも?)小説指南本を好む層、っていうのがいそうなので、っていうか、そして、自分にその空気が少しあるかと思うので(指南本というか人の創意工夫と整理とまとめが好きなので)、まあそういう人もそこそこいるのかもね、と思った。
 小説道場における、中島さんの熱意とか情熱とか、小説大好きみんなも書こうぜ!みたいな感じを見てると、そして臆面もなく「自分ほど小節を書くことを愛している(中毒になっている)人間は史上空前だと信じるね」と言ってしまう姿を見ていると、このひとの小説は一回ちゃんと読んでみたいものだ、って思ってしまうなあ。
 いや、ほんとうに、森博嗣さんとはぜんぜん違う。見た目としては完全に逆位置だろう。しかし、似ていると感じている。正直、いや、えーと、そっくりだ、とすら思っている。
 なんだろなー。森博嗣さんは、確かに、小説を特権化してるわけではなく、ビジネスライクのような語り口で、必要なことを説明しているのだけど、それだけでもなくて、その奥には、なんていうか、創作、ってことについての思考や思想や試行錯誤があって、それに、唸らされるところがあったのだった。小説という概念に対しては淡々としている感じがありつつ、創作、って概念に対しては、こだわり、愛、熱意、情熱、というかなー、そういうのを感じられたのだった。そしてそれが、中島さんの小説に対する「これがいいんだ!わたしはこれが好きだ!これがいいと信じる!」という叫びに、わりと似ている、って思った。
 同じものだろう、とすら思える。
 愛と知性があるのがわかるよ、みたいな?
 なんにせよ、お二人の話を聞いていて、小説についての話、小説論、を、自分もなんとなく一席打ってみたくなって、でも、この二人のように、ものすごくたくさん小説を書いた経験などはまったくなく(はるか昔にちょっとだけ書いてみたことがある程度だ)、だから逆に、いま、小説を書いてみようとかちょっとだけ思っているところがあるので、まあ今後書いてみることがあったとして、その経験が積み重なっていくにつれて、いろいろと学んでいったことで、変わっていくであろうもろもろの判断や認識、があるだろう、ということを前提として、逆に、そういう変化が起こるに、いま、現状、ここまでで、どういうものが頭の中に浮かんでいるか、浮かべられているのか、っていうことを書きたくなって、なので、「やってもみないで」っていうことをむしろ前提として、まだまだぜんぜんやれてない人間の頭に何があるか、っていうことを、むしろ書き残してみよう、書けるだけ書いてみようか、なんて思ったのだった。
 まあ、要するに、そういう浅はかさと準備を整えておこうと思った話です。

小説家という職業 (集英社新書)

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小説道場〈2〉

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