世界は称賛に値する

日記を書きます

神さまのいない日曜日(入江君人)を読み終えた

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

▼▼極端や歪という表現が似合う語り口だなあと感じた。おのおのの文章の範囲や飛躍の距離が一定や一律ではなくて、違和感が残る。が、だからこそ「おもしろさ」に対して最適化されている、という印象だ。非常に好きな文章だった。物語も巧くて美しい。▼▼死者が死者でなくなった世界。見捨てた神さま。墓守の少女。村。秘密。壊れた墓守。不死身。悪。墓守アイ。ヨーキ。アンナ。人食い玩具ハンプニーハンバート。通りがかりの墓守スカー。復讐のユリー。母ハナ。軽妙な会話が楽しい。真剣で「ちゃんとしている」ハンプニーの格好良さ。アイの信念。物語の根幹はSF要素的にも解釈できる。が、世界の根幹のようなものについてはあっさりである。続刊で触れていくなら楽しみだ。

 ヨーキは悪寒を覚えて凍り付いた。なにか、とても重要な事柄が起きていることは分かった。しかし具体的に何が起きているのかさっぱり分からなかった。こんな事はいままで一度だってなかった。こんなアイは初めてだった。自分の中でのアイはもっと賢かったはずだ。自由奔放でいながら、いつも大人たちが本当に求めている事を嗅ぎ取り、我が道を行くが我が儘を言わず、怒られはするが叱られず、困らせはするが煩わせない。そんな子供だと思っていた。
 その子がいま、我が儘を言っている。煩わせている。全身全霊で何かを訴えている。
 今すぐ動く必要を感じた。ずっと先延ばしにしてきた何かの精算を迫られているとわかった。
──P.35

《89点》