世界は称賛に値する

日記を書きます

εに誓って(森博嗣)を読み終えた

εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)

εに誓って SWEARING ON SOLEMN ε (講談社文庫)

「そうやって、呼ぶことが、既に本質から逸れています」海月が言った。
「そうか……」赤柳は少し驚いた。「そうだな、たしかに。うん、やはり、現代人というのは、とにかく言葉に置き換えようとしてしまう。それが何であるかを見極めることは、今では言葉で表現することに限りなく近い、というわけだから」
──P.113

▼▼読み終えた。特筆して好きな小説家である。通称Gシリーズ。四作目というよりは四話目と言えるかな。東京でバスジャックが起きて、偶然巻き込まれる。▼▼難解で深遠な物語が正しくて、良い、ってわけじゃ別になくて、場面や状況により最適ってものがあるのだ、っていうことを意識させられる。なんてのを狙っているんだろう、と想像できるからだ。想像できるのは信頼しているからだ。▼▼最低限の情報を見せて、シンプルでありながら──あることを活かして、可能なことは、何だろう、というような思考の匂いを感じている、のだ。勝手に感じてしまっている、のだった。あるいは、既存の読者には前述のような問いを見せながら、新規の読者には読みやすさを推している、なんて表現でもよい。わかりやすいカタルシスは棄てられてしまっている、って認識できる。で、地味だとは思うけど挑戦や判断としてはとても好きだ、って思えてもいる。《81点》

「以下は備忘録」

プロローグ

*神々も時間に従属するはかない形体→いけにえ→意味のある最高の行為?
*雪の中を走る加部谷恵美→時計が止まっている→山吹早月に電話→東京ばなな→遅延
*待合室のベンチ→山吹早月→制服の男→出発遅れます→電話→西之園→海月くん宛→東京→加部谷はディズニーランド→海月は山吹の部屋
*柴田久美→エスカレータでバスに向かう→タクシーが遅れた→これ以外に道はない
*矢野繁良→バスのシート→左側の石→車内の人数は少ない→緑のダフルコートを着た少女→メール→イプシロンに誓って→自分の世界→音楽→基本システムとしての自分の肉体→終焉→責任→尊厳→発車
*運転手→市川昌夫→死亡→発見

第一章 悲しみの始まり

*夢が覚めて→深い悲しみ→値打ちのあるもの保存に値するもの→掌中に残っていない→空虚
「1」山吹早月→一番後ろのシート→右隣の窓際に加部谷恵美→左側は二人の荷物→加部谷は後輩→山吹は大学院生→東京→別の目的→研究の進捗が芳しくない→東京ばなな→お土産→折半→睨まれた
「2」柴田久美→後ろから二列目の右側のシート→比較的空いている→一つ前のシートに若い男が一人→ときどき彼女の方を覗き見る→自分以外の生命、思考力を持った頭脳が存在している→不思議さ、不安さ→半分死んでいる→自動販売機になってほしい→自分だけが消える→後ろは男女のカップル
「3」矢野繁良→後ろから三番目の左側のシート→斜め後ろに緑のダフルコートの少女→絵を描いていた→才能を信じていた→今でも信じている→躰が拒否している→肥大化する躰→危ういシステム→自分の世界へ→往復
「4」警察に通報→三井賢太郎→市川昌夫の同僚→隣の部屋から物音→会社への知らせ→担当の黒田係長→三井賢太郎に電話→代理
「5」加部谷恵美→雑談→製図の相談→下宿の相談→大学院の相談→山吹は本を読んでいる→修士が終わったらどうするのか→研究のテーマによる→ミッキー→アリバイ→バスの前から男の声→乗っ取らせていただきました→武器→穏便→携帯電話は使ってよい→個人の行動ではない→組織的なプロジェクト→抹殺は許可されている
「6」犯行声明→マスコミ→臨時ニュース
「7」西之園萌絵→自室→携帯電話にメール→加部谷恵美→警察に連絡→近藤啓治→自宅の電話で電話→犀川創平→東京へ出張中→メール→公にしたがっている→テレビ
「8」警察およびマスコミへは通知されている→状況説明→高速道路→思想的な事情は説明を省く→要求も→ほかにも武器がある→威嚇もしない→加部谷恵美→山吹は観察している→犯人が紛れている→中部国際空港→特別に停めることもできる→保険として爆弾
「9」西之園萌絵→愛知県警本部→ほかの乗客→警察は把握している→鵜飼警部補→バスの運転手が射殺
「10」柴田久美→前の方で変な男が話し始めた→嫌な話し方
「11」矢野繁良→ヘッドフォン→関係ない→築き上げたシステム→周囲を遮断→顔と声→安定した→子どものとき→母親→誰でも変化する→若い頃→いつまでも生きられると信じている→不自然→ハードディスクを消した→時間が失われていく
「12」榛沢通雄と倉持晴香→バスの左側のシート→死んでしまう→頭を撫でる→後ろの人のヘッドフォン→窓の外にヘリコプタが飛んでいる

第二章 悲しみの連なり

*そういういっさいを知ることに価値があったろうか
「1」西之園萌絵→愛知県警本部→テレビ→加部谷恵美と電話→犯人グループの一人→拘束→交渉→若い頃の自分→説得
「2」赤柳初朗→山吹早月のアパートの前→東京の友人からの電話→宗教団体の情報→少し前から追っている→εご一行→来客→隣の舟元繁樹→山吹がバスに乗っている→メール→海月に連絡→海月に知らせたい理由→
「3」犀川創平→ホテル→鵜飼と電話→警視庁の沓掛→爆弾の設置箇所→ブースター→携帯電話を使わせる→組織→今すべきこと、今できることは、なにもない
「4」加部谷恵美は数分だけ眠った→海月に連絡→同人誌即売会→姉→最悪の場合は→頼もしいのか頼りないのか
「5」西之園萌絵→国枝助教授に電話→旅行社→仲間の住所→コンピュータに詳しい人
「6」赤柳初朗→山吹の部屋→言語で事態を評価→インターネット→変な運動→言葉で説明するのが難しい→抽象的な皮→記号化への反逆→支配欲
「7」加部谷恵美→違和感→飛行機→仮病
「8」柴田久美→ウサギのぬいぐるみ→くうちゃん→魔法の国の王子様→ただじっとしている→純粋で美しい生き方
「9」矢野繁良→音楽→抜け殻→楽園→純粋さ→純粋な存在から導かれた→崇拝→生け贄→美しさ

第三章 悲しみの広がり

*自分の変化→彼の中で死んだ→自我ではなかったか
「1」警察の公式コメント→赤柳初朗→海月と山吹のメール→乗客→誘導→ネットを使った勧誘→動機がわからない→言葉にすればどんなものでも理由にできる→反応できないものは収まりが悪い→冷めている→解釈
「2」西之園萌絵→警察の車の後部座席→旅行社→《εに誓って》→十八人→《イプシロン・プロジェクト》→玉城
「3」加部谷恵美→ギリシャ文字→氷山の一角→アンチ宗教
「4」榛沢通雄→倉持晴香の頭→優しい→可哀相→涙が出る前→思考を止める→自然数を吟味する→空間の数字を置き換え整理し光らせ消していく→偽善→手の届くところだけ→汚れたくない→運命→目的が明確だった
「5」矢野繁良→人間→諦めが早い→眠ること、死ぬこと、意識を失うこと→他人を支配→醜い→綺麗さを刻んでおきたい→刻まれた信号
「6」柴田久美→寂しくなった→くうちゃんの世界→誰かに甘えている→バイト先で喧嘩→ここにはいられない
「7」加部谷恵美→ウサギのぬいぐるみが落ちた→手紙→海月からメール→近い乗客→文通中
「8」海月→グループの目的→宣伝行為→イプシロンの意味
「9」西之園萌絵→パトカーの後部座席→何をすれば自分が落ち着くのか→犀川に電話→お仕事頑張って下さい→爆弾の処理
「10」包装紙の返事→返事→乗っ取り事件→政治的要求→絶対的な存在→関係
「11」赤柳初朗と海月及介→ラーメン→乗り込むまで
「12」夜明け→東京ばなな→乗ったときの状況→静電気

第四章 悲しみの高まり

*どこから楽しさを得たのか
「1」山吹と加部谷→文通終わり→運転手がクリティカル
「2」大泉芳朗→会社員→会社の金→運転手→三井→市川じゃないみぎ遅れ気味→ヘリコプタ
「3」榛沢通雄→ヘリコプタの音→死ぬための目的→いつだって期限付き→口元をゆるめた
「4」倉持晴香→寝ている振り→叩かれる→榛沢→最後は怒り出す→死滅した宇宙が好きだった
「5」テレビ局と新聞社のヘリコプタ→警察の記者会見→赤柳と海月→普通の宗教団体にはないものがあると感じた理由→西之園に電話→情報交換
「6」犀川創平→沓沢→爆弾処理→プロデュース→放任→55%→狙撃
「7」加部谷と山吹→西之園が山吹の部屋へ→げ→圏外
「8」西之園萌絵と国枝桃子→ジョギング→三十分待って→狙撃→妄想的な力→殺したいという気持ち→避けて通れない→突飛、文学的→犀川先生とは違う
「9」佐々木睦子→北林→バスにはチェックがない→萌絵と電話→山吹と加部谷が乗っている
「10」赤柳初朗と西之園萌絵→返事がない→テレビ→録画
「11」大泉芳郎→運転手のすぐ後ろ→三井→これ以上バスに乗っていられない人
「12」矢野繁良→眠っていた→快楽を求める→苦辛から逃れている→演じている→今さら
「13」榛沢通雄→なにかが変化したように思える→消えたことを知っている人間→大丈夫
「14」矢野繁良→音楽→初めて聴いた音楽→リズム→絵→願わくば
「15」柴田久美→祈る→大丈夫
「16」加部谷恵美→根拠などない→言葉にはなる→風景が消える
「17」西之園萌絵と国枝桃子→ヘリコプタからの映像→トンネル→煙
「18」トンネルの中の二人→全然わからない→泣いているだけ

第五章 悲しみの静まり

*統一の中に入る
「1」犀川創平→最も騙されたのは→深淵の中の人格→プログラム→涙で怖れを測る→加今見える精神のフラッタ
「2」西之園萌絵、国枝桃子、赤柳初朗、海月及介→可能性
「3」佐々木睦子→風情→川柳→山茶花→兄からの電話
「4」起こったこと→覚えているが、理由が理解できない→
「5」国枝研究室

エピローグ

*加部谷恵美→病院→柴田久美→死のうと考えること→考えても死なないこと→結果として死ななかったこと→尊厳→疑問、欺瞞、偽り、誇り