世界は称賛に値する

日記を書きます

職場最寄りの書店で買った

「1」冷たい校舎で時は止まる 下

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 桐野景子は空気を深く胸に吸い込み、部屋の中を見回した。
 油絵の具のじっとりとした匂い、立ち並ぶ画板。美術書の入れられた本棚の上から、モデルが誰とも知れない石膏像の無表情な目が自分のことを見下ろしている。
 無駄なことと頭の片隅で半ばそれを諦めながら、それでも景子は名前を呼ぶ。
「清水」
 暗い美術室の中、返事はやはりない。

▼▼昨夜上巻を読み終えて、続き読みたいなあ、けどほかに読むのもあるしなあ、なんて思いながらも、待ちきれなくて買ってしまった。幕引きが巧かった、って言える。巧みに揺さぶられた、って感じだろう。学園に閉じ込められる──苦悩する高校生。自殺の記憶が残っている──既に死んでいるのは誰だ? なんて問いを軸にした物語。斬新と言えば斬新? けど、実際のところは問いを丁寧に描いていることが褒めどころだと思う。