世界は称賛に値する

日記を書きます

職場最寄りの書店と地元ブックファーストで買った

「1」道徳は復讐である

道徳は復讐である―ニーチェのルサンチマンの哲学 (河出文庫)

道徳は復讐である―ニーチェのルサンチマンの哲学 (河出文庫)

 幸福な人の世界は不幸な人の世界とは別の世界である。現代の日本においてもまた、その不幸の意味がすでに世に知られてしまった、その意味ではもうすでにいくらかは幸福な人たちとは別に、その不幸の意味がまだ世に知られていない、あるいは永遠に知られることのない、その意味で本当に不幸な人たちが存在している。だが、そうした人たちの声が世に響きわたることはない。響きわたる声はどれも、大所高所から嬉々としてさまざまな「問題」を論じる幸福な人たちの声か、あるいはそれらの「問題」にうまく収まるおあつらえむきに不幸な、したがってある意味ではもうすでにいくらかは幸福な人たちの声である。新聞雑誌やテレビはもちろん、日々出版される書物の大半にいたるまで、不幸な人は、これらのメッセージを決して自分に向けられたものと受け取ることはできない。彼らへのメッセージは、まったく別の場所から発せられているのである。

▼▼文庫化。寓話で語られる最初の比喩的な話が滅茶苦茶おもしろくて買おうとは思っていた。著者は強く敬愛する人物の一人である。繊細な視線の極北とか思っている。

「2」人間は考えても無駄である

人間は考えても無駄である-ツチヤの変客万来 (講談社文庫)

人間は考えても無駄である-ツチヤの変客万来 (講談社文庫)

 人間の賢さを問題にするなら、動物と比較した方がいいのではないかと考えて、動物の専門家を加えるべきだったと思う人もいるかもしれないが、動物との比較はあえて避けた。この四組と比べると動物の方が賢いという結論になりかねないからだ。
 登場する四組は、それぞれ専門が違い、うち三人が研究者である。研究者とは、おのれの無知に目覚め、無知からの脱出を夢見て研究を続け、ますます無知を自覚する羽目におちいった人々である。しかし研究者は絶えず無知から脱出しようとしているのだから、人間がどこまで賢くなったかという問題に寄与してくれるに違いない。
 研究者ばかりではバランスを欠くと思い、あと一組は元バンドマンの二人にした。この二人は研究者とは正反対でありながらもう一方の極端である。そのため、毒をもって毒を制す効果が得られるのではないかと期待したのである。結果的に毒が二倍になった恐れもある。
 顔ぶれが決まってみると、賢いと言えるような人が一人もいないことに気づき、不安がつのったが、賢さを論じるためには賢くある必要はないと思い当たった。ちょうど病人でも健康を論じることができるのと同じである。また、人間の賢さを明らかにする方法も一通りではない。愚かさを論じても、賢さを間接的に論じたことになるし、本人の愚かさをさらけ出せば、賢さを逆方向から身をもって明らかにしたことになる。さらに、賢さを知ろうとして本書を読んで失望する人は、期待した自分の愚かさに気づき、賢さを逆方向から思い知ることになる。

▼▼好きな文章を書く人で、常に裏をかいている印象だ。濃いので、時折、読もう、って思う。ので、著書全部は読んでない。対談式で新しい楽しさがあって買ってしまった。

「3」使える!経済学の考え方

使える!経済学の考え方―みんなをより幸せにするための論理 (ちくま新書)

使える!経済学の考え方―みんなをより幸せにするための論理 (ちくま新書)

 この本で読者のみなさんに提案しているのは、「無条件で何かを信じる」のではなく、「どんな条件のもとでならそれが正当化されるか」、そういうふうに考えましょう、ということです。つまり、「結論」を急ぐのではなく「前提」を明らかにすることが大事だ、ということです。非常にまどろっこしい迂遠な作業ですが、利害の衝突を和らげるために、ものごとを相対的に考え、紳士的な議論をするには、「前提」を明らかにする道こそが近道なのです。
 そして、意外に思われるでしょうが、それらを最も可能ならしめるのは、「数学を使って議論をする」というやり方です。数学ほど、無味無臭で情感に訴えない「言語」はほかにないからです。
 実は、このような議論の方法こそ、まさに現代の経済学の考え方なのです。

▼▼数学や算数を巧く愉しく語る人、って印象は以前からあって、著者の日記等を読んで尊敬も増した。経済学まとめです、って聞いて、おお、って思って買った。経済学好き。

「4」決算書がスラスラわかる財務3表一体理解法

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)

 決算書がスラスラと読めるようになりたい、とひそかに思っている人はたくさんいます。しかし、現実は「いくら会計の本を読んでも、よく分からない」といった感じの人がほとんどではないでしょうか。
 かく言う私自身、会計の「仕組み」を理解するまでには、かなりの時間がかかりました。何冊も会計の入門書を読みましたが、「損益計算書」や「貸借対照表」の構造くらいまでは理解できるのですが、いざ実際の決算書を見てみると表の中のどこを見ればよいのかがよく分からないという状態でした。
 MBA(経営学修士号)を取るために米国の大学に留学した時も会計を学びましたが、いまから思えばその時も会計の本質は理解できていませんでした。

▼▼再購入である。以前持っていた。貸している。改めて会計を勉強する必要に駆られたせいだ。複数読んだ中で最も素敵だった、という認識が残っている。初手には向かない。

「5」冷たい校舎で時は止まる

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 落ちる、という声が本当にしていたかどうか。それは、今となってはもうよく思い出せない。
 その声は、あの時のあの瞬間、確かにどこかでしていたと思うし、また現実に自分が聞いたのだとも思うのだが、では具体的に誰が言ったのか、どんな風な声だったのかということになると、それは途端に曖昧になってしまってさだかでない。
 ただあの時、頭の中は真っ白になった。痺れたようにひくついたその脳裏に、たった一つ、静かな声がふっと浮かび上がり、それが確かに告げていた。
 落ちる、と。

▼▼称賛が脳裡に残っていて読もうと決意してみた。最近ミステリ読んでないなあ読みたいなあ、的な心境が後押ししていたと思う。推薦文多数の印象が強めだ。学園物好き。