勉強法が変わる本(市川伸一)P.125

勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)

勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書)

 解法暗記派の和田氏が「入試には同じようなパターンの問題しか出ない」と言うのも、自力解決派の吉永氏が「入試では基本的に初見の問題を解くことになる」と言うのも、どちらも真実を含んでいる。と同時に、どちらも正確な表現ではない。より妥当な言い方をすれば、高校数学や受験数学の範囲でも問題としてのバラエティは無限に近くあるが、それらはいくつかの基本的なパターンの組み合わせであるということだ。
 だから、この章の例題で見たように、うまく問題を解きほぐすことができれば、基本的パターンにもちこんで解くことができる。そこで、数学の学習というのは、基本パターンの数を増やすことと、問題の解きほぐし方がうまくなることになる。どちらに重点をおくかは、好みの違いということになるが、実際はどちらも必要なことはすでに述べた。これは、どんな種類の問題解決にも共通することなのである。認知心理学の立場から見たとき、解法暗記派と自力解決派の対立は、その一方だけを強調しすぎていることがわかるだろう。
 問題のパターン(すなわち、問題スキーマ)をたくさん頭に入れておいて、それに応じたやり方を知っておくというのは、たしかに有利である。その意味では、解法暗記派の言うことは妥当だ。とくに、いろいろな問題でよく使われる「定石」は知っておいたほうがよい。せっかく定石を適用するところまで、問題をやさしくできた(つまり、ミエミエになった)のに、まだわからないというようでは困る。
 しかし、定石を知っているだけでは、定石にない問題で立往生してしまう。そこで、自力解決派の言うように、新しい問題にあたるごとに、どのようにすればいいかを考える習慣をつけることが必要になる。ただしこのときも、やみくもに考えればいいというわけではなく、
・図を書きながら考える
・簡単な問題にするにはどうするかを考える
・何が求まればいいか、逆向きに考えてみる
などのかなり一般的な方法をワザとして使えるようになることが上達の早道なのである。
――P.125