世界は称賛に値する

日記を書きます

四季 夏(森博嗣)

四季 夏 (講談社文庫)

四季 夏 (講談社文庫)

 結局のところ、彼女にとって一番の疑問は、自分が具体的に何を求めているのか、という部分である。欲望は、何かが満たされることを想定するものだが、その希望的な予測の具体像が、思い浮かばなかった。計算することができない。おそらくは、その不確定さこそが、この特殊な感情の持続性に関係しているだろう。掴みどころがないために、いつまでも幻滅が生じない。そういったメカニズムだと彼女は考えたのだ。
――P.166