[印象記]恋々蓮歩の演習(森博嗣)

恋恋蓮歩の演習 (講談社文庫)

恋恋蓮歩の演習 (講談社文庫)

 何か忘れものでもすれば良かった。それとも、もっと酔っ払って歩けなくなれば良かった。そんな各種のストーリィを思いついた。けれど、どれも自分には演じ切れそうもない。
 アパートに帰り、玄関で靴の紐を解いたとき、いつもなら少し無理をして足を抜いてしまうのに、何故か今夜は、手間をかけてやろう、細かいことを無視しないで、生活からこぼれ落ちているものたちを拾ってやりたい、と彼女は思った。
――P.55