未来形の読書術(石原千秋)

未来形の読書術 (ちくまプリマー新書)

未来形の読書術 (ちくまプリマー新書)

 それでも、推薦してくれた本を読んでよかったと思うことがある。それは、推薦してくれた先生と信頼関係ができている場合ではないだろうか。つまり、あなたはその先生にあなたの未来の一部を預けてもいいと考えたのである。信頼するということは、相手に未来を預けることだ。
――P.23

▼読書術の種類を未来形と過去形に分けて説明している。以後起こりうる変化に対する祈願、を指向したもの、と、以前あった判断と知識に対する確認、に根差したもの、に、読書を分別して、読書が持ちうる可能性、を語っている。が、別に「未来形の読書術」を礼賛しているわけではない。奨励もしていない。単に性質の違いを説明しているだけだ。こういう読書スタイルがいいのです、は、此処にはない。▼親切ではない、とは思った。批難ではなく、思った。理路整然ではない。わかりやすくない。複数の語りを、脳内で組み替えて、整理しないと、見えない像がある、と思えた。精読の必要があり、つまり、頭を活用する必要がある。最後に合算処理をすることで見えてくるものがある。地道に合算処理していくことで見えてくるものがある。が、処理後に見える風景、は、正直、愉快で美味で有益だった。否定は全然思えなかった。▼おのれ自身の、脳を、腕を、活用して、話をまとめなければならない。答えはない。最後に此処に辿りつけばいいのですよ、という説明はない。だから、辿りついたところが正解だったか、も、わからない。多少は不安が残る。というのも、意外と愉しかった。思いのほか快感だった。まだまだ見逃しがあるかもしれない。というかあるだろう。だから、まだ考えられる。思考する余地がある。まだ遠くがあり、果てに、さらなる愉しみの境地があるに違いない、と思える。という、胸裏の不安定な感覚は、むしろ、わくわくで、親切じゃないのもアリか、とか思うのだった。