カナスピカ(秋田禎信)

カナスピカ

カナスピカ

《★★★★》

 でも、気持ちひとつだ。カナスピカが起きていてくれれば怖くなんてなかったし、むしろ楽しかったに違いない。カナスピカと会ってから見たのは、いままでずっと見てきたつもりだったのに見ていなかったものばかりだ。それは全部楽しかった。
――P.205

▼簡単には忘れないだろう、と思える情景がいくつかあった、なんて言えるとは思う。表現がすっきりしている、ということに対しては、わりと複雑な想いがなくもない。複雑な現象をきっちり描くために複雑な表現になってしまっている、という著者の特性を、かなり好んではいたからだ。という要素がまるでなくなってしまっている、ということではない。エンジェルハウリングや閉鎖のシステムがダイスキな奴だからねえ、とは思う。とはいえ――まあでも。おもしろかった。間違いなく。衒いなく。ちなみに、現状だと「秋田禎信という作家の好きなところ」を、単語の選択傾向、時おり独特が垣間見える文法、世界に対する視線と思考、に分けて(無論、同一と看做すことも可能ではあるだろう)見ているところがあり、でもって、後者ふたつはほぼ変わらず維持されている印象があったりもして、おかげでか、やっぱり好きだなあ、とはあっさり思えた。影響も受けている。