ゼロヨンイチロク(清水マリコ)

《★★★★》

ゼロヨンイチロク (MF文庫J)

ゼロヨンイチロク (MF文庫J)

 夜景を見るのは初めてではないし、いま特別に悲しいとか、嬉しいとか感情が盛り上がっているわけではない。注目したい何かがそこにあるのでもない。なのに、不思議と目が離せなかった。風と、温度と、山のにおいと、ふくらはぎが微妙に張る疲れが溶けあって、身体がほかのことをさせてくれない。空気が胸に染みてきて、そこからふわりと身体が浮き上がる感じがした。自分はたしかにいまここにいるのに、同時に夢の中にいる気分だった。一人の心細さが逆転して、一人ぼっちが心地よかった。
 この感じを、どこかで味わったことがあるかもしれない。それは、あのトオという女の子と、関わりがある場面だっただろうか。
――P.45

▼再び物語が好きになっている、と思える。妙に物語を所望しない時期があったのだ。著者の作品の影響を受けた、んじゃないかと思う。現実と夢幻が交錯するような物語はかなり好きだ。境界線がはっきりしない、という境界線にはわくわくできる。現実として認識するべきなのか、夢幻として判別すべきなのか、悩み迷い考えるのが、楽しい。好きだ。