《★★★★★》
- 作者: 野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 新書
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少しむずかしげな言い方になるかもしれないけれど、一般的に言わせてください。なんらかの主張「A」を否定して「Aではない」と言えるのはどういうときか。それは、その状況で「A」と主張するとまちがいになってしまうときです。私の机の上に関して「金塊がない」と正しく主張できるのは、いまこの状況で「金塊がある」と主張するとまちがいになるということがはっきりしているからです。なんだかあたりまえに感じますか? いや、ぜんぜんあたりまえじゃないんですよ。これ。
「金塊がある」という肯定形の主張と「金塊がない」という否定形の主張は根本的にことばの働き方が違う、そう言ってもいいです。どう違うのか。「机の上に金塊がある」というのは、机の上の状態を描写したものです。もちろん、「机の上に金塊がない」という主張も、机の上の状態を描写したものと言ってよいのですが、しかし「机の上に金塊がない」は基本的に「机の上に金塊がある」という主張に対して、「その主張はまちがっている」と主張するものにほかなりません。「Aではない」は「A」という主張がまちがいだと訴えることを通して、いわば間接的に世界の状態を描写しているわけです。
――P.37
▼滅茶苦茶素敵だと感じた。論理学解説書だ。あえて縦書きを選択したことで意外なほど論理学を『裸』にできたのではないかと思う、と記述されていた。読んでいて言葉の意味が理解できた。理解できたことが嬉しかったりもした。論理学の『核』が描かれていると思った。最初の論理学書としては推奨できない。漫然と『論理学の知識』を獲得してから読むと、がしがし概念が整理されていって快感を覚えられるだろうな、なんて思った。