国語教科書の思想(石原千秋)P.27

国語教科書の思想 (ちくま新書)

国語教科書の思想 (ちくま新書)

《90点》

 国語で道徳を教えるなとは言わない。しかし、道徳だけを教えるのでは、いかにも堅苦しい。たとえば、主人公の「心情」を説明しなさいと言われれば、人間の心の動きは自由だから、それこそ読者の数だけ「正解」があっていいはずだ。しかし、学校空間ではなぜか「正解」が一つに決められてしまう。それは、道徳的に「正しい」心の動き以外は「まちがい」だとされるからである。
 教師も大人も「国語は道徳だ」とはっきりとは教えてくれない。それでも、多くの児童や生徒はしだいに「国語は道徳だ」という法則を身に付ける。そうしなければ学校空間では生きていけないからだ。それが「国語ができる」ことなのである。そして、その代償として「国語はお説教臭くてつまらない科目」になってしまうのだ。あるいは、「国語は心を一つに決める奇妙な科目」になってしまうのだ。