世界は称賛に値する

日記を書きます

哲学はこんなふうに(アンドレ・コント=スポンヴィル)

哲学はこんなふうに

哲学はこんなふうに

  • 作者: アンドレコント=スポンヴィル,Andr´e Comte‐Sponville,Corinne Quentin,木田元,コリーヌカンタン,小須田健
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: 単行本
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P.117

 こう言ったからといって、神について反省をめぐらしたり、これらの証明を吟味したり、別の証明を考案したりすることが禁じられるわけではない。たとえば、神の存在についての純粋な汎神論的(パンティスト)な証明といったものを(ギリシア語で「パン」とは「すべて」を意味する)思い描くことだってできるだろう。実在するものの総体を神と呼んでみよう。そうすれば、あらためて、定義からして(すべての実在するものの総体は、必然的に存在しているはずなのだから)神は実在することになる。だが、こんな証明にはなんの意味もない。なにしろこの証明は、そのばあいの神がなんであるのかも、それがどれほどの意味をもつものなのかも、ぼくたちには語ってくれないのだから。万物の総体としての宇宙を持ち出してみたところで、すくなくとも当の宇宙にそんなものを信じる能力があるというのでもなければ、神などというものが存在するかに思われるようにはなりそうもない。だが、宇宙に信じる能力があるなんてことがあるだろうか。友人のマルク・ヴェツェルの言うところでは、「神とは、万物の自己意識である」。そうかもしれない。だが、万物が意識をもつということをなにがぼくたちに証明してくれるのだろうか。