殺人は駄目と自殺は駄目

 殺人と自殺はどこが違うのか、ということについて比較的深く考察していた。殺人禁止理由と自殺禁止理由には違いがあるのか、という興味深い設問を聞いて、妙に思索を巡らせていたのだった。ひさしぶりに頭脳を回転させたかな、と思う。設問に接してまず最初に考えたのは、殺人禁止にせよ自殺禁止にせよ、命を捨てるな、という要請であることは間違いないだろう、ということだった。次いで考えたのは、では『命を捨てるな』という要請は実際のところ何を意味しているんだろう、ということだった。思考後、それは『命には価値がある』ということの言い換えなのではないか、という答えを返す。命には価値がある? でも価値ってのは主観的なものじゃないか? というような思考を経て、とりあえずは『普遍的な価値』とやらを前提にしなければ命を護るための理由は紡げないのではないか、と考えたりもした。普遍的な価値なんて絶対にない、と考えたことは、実はない。人間は確かにそれぞれ違う『個性』を持った存在のように思えるけれど、でも実際には共通点のほうが多いからだ。最終的には、この方向を見つめていても殺人禁止理由と自殺禁止理由の違いは掴めなそうだ、と感じたので、ちょっと方向を変えよう、と思った。