ここが転換点

 転換点。出勤してすぐに異動の決定を告げられた。噂は聞いていた。私になるんだろうな、と予測してもいた。が、実際に決まってしまうと、やはり予想以上の心境を実感させられるものだよな、と思う。この想像力の甘さが人間の限界なのかもしれないな、と時おり考える。どんなに事細かに想像しようとしても、人間の想像は、見落としてしまう点があるからだ。たとえば、想像で一億円拾ったときの心情、と、実際に一億円拾ったときの心情、は、ほぼ確実に違うものだろう、と『想像』できる。おそらく、実際に拾ったときの心情、のほうが、感じられることが多いのではないか、と思う。つまり、想像で拾ったときの心情、は、その差分を見落としてしまっているわけだ。そのへんをどうにかできるなら、想像と現実は違う、なんていうつまらない言説を撃退することもできるのにな、と考えたこともあった。異動に対する不満などはない。寂寥があるだけだ。仕事そのものは順調だった。比較的暇だったとも言える。突然店長がスタッフを呼び出してお説教をかます、という場面もあった。聞けば、やるべきことをやってこなかった、というような状況があったらしい。突然さに驚いた。罪悪感も覚えてしまった。私にも関係した問題だったからだ。私が慎重になっていればあるいは阻止できたかもしれないな、と思えるような問題だったからだ。きちんと謝る。もうあまり寄る機会もなさそうだ、と想像したので、帰り際にブックオフに寄って行こうか、と考える。結局三冊ほど購入して家路についた。