世界は称賛に値する

日記を書きます

SPEED(金城一紀)

SPEED (The zombies series)

SPEED (The zombies series)

P.175

「わたし、変なこと言ってる?」
「別にそんなことはないよ」とアギーは言った。「でも、あんまりクールになりすぎるなよ」
「どういうこと?」
「なんて言えばいいのかなぁ……」
 アギーは助けを求めるように、バックミラーで朴舜臣の顔を見た。
「おまえはいま、色んなことに気づき始めてる時期なんだよ」
 バトンタッチを受け、朴舜臣は言った。
「おまえのまわりを取り囲んでるシステムとかカラクリとか、おまえがこれまで特別に意識してこなかったものだよ」
「それがいけないこと?」
「いけなくはないよ。ただ、もしおまえがシステムとかカラクリとかに疑問を感じたり窮屈に思うようだったら、きちんと怒り続けるべきだよ。こんなもんか、なんて思わないでな」

P.197

「悪くないよ。タイミングとスピードもよかった。でも、こっちの世界まではこぶし二つ分ぐらい足りなかったな」
「……どうして?」
「誰でも初めはそうだよ。自分で思ってるより、自分の世界を抜け出るのは大変なんだ」

P.203

「なんで落ち込むの?」南方はまた不思議そうな声を出した。「最低な場所に出くわしても、岡本さんがそこに馴染まなきゃいいだけの話だろ。それに、その場所を変えちまってもいいし、それか――」
「それか?」
「そこから逃げてもいいし」南方は楽しそうに言った。「逃げるのも楽しいよー。とにかく、俺たちは自分で思ってるよりかなり自由なんだぜ」

P.208

 みんなはこんな窮屈な場所で一緒に闘ってきたわたしの戦友なのだ。二度と、こんなもんか、なんて思わない。