懐かしいに染まる部屋

 懐かしいという感情が好きだった。というか、正確に言うなら今でもかなり好きだ。にもかかわらずあえて過去形で書いたのは、かつてのほうがその感情の揺れ幅が大きかったからである。今は昔ほど『懐かしい』という気持ちに想いを寄せなくなった。未来を考えること、そして、高き理想を掲げてそれをなそうとすること、に、さらなる楽しさを見出すようになったからだろう。これは『成長』だろうか。成長だ、と言い切ってしまいたいところだが、単に格好つけるようになっただけかもしれない、とも思う。仕事は休み。基本的には部屋の掃除をしていた。明日届くソファベッドを搬入するための準備だ。懐かしいものがたくさん出てきた。懐かしさが部屋に溢れ、部屋が独特の空気に染まった。私は昔から、ちょっとしたものを取っておくのが好きだった。軽い思い出の品を取っておくのが好きだったのだ。勢いで買ったくだらない玩具とか、たいしたことが書いてあるわけでもないメモとか、そういったものをいつも捨てないでしまいこんでいた。今回の掃除ではそれにかなり見切りをつけた。要するに、思い入れの強くないものは処分することに決めたのである。結果、大切なものだけが残った。それもまたアリかな、と思う。無駄なものがたくさんあると、大切なものもまた、その中に埋まってしまうからだ。厳選されたものだけが残っていれば、当然、大切なものもより際立つ。別に意識してそれを目指したわけではない。が、きっとそうなると思う。そして、そうなるのは、わりと嬉しいことだ。