図南の翼(小野不由美)

図南の翼 十二国記 (講談社X文庫)

図南の翼 十二国記 (講談社X文庫)

 珠晶の生き様は正直賞賛に値するけれど、それを賞賛したいと思うのならば、私自身もまた、彼女の持つ強さや誠実さといったものを目指して生きなければならないのではないか、というようなことを考える。というか以前からその問題については考えていた。つまり、実践をともなわずただ口先の言葉だけで褒め称えていても、それだけでは(心の中でどれほど本当に素晴らしいと感じているのだとしても)無意味なのではないか、という問いだ。貴女を大事に思っています、なんていくら言ったところで、実際に行動で大事にしているということを示していないのであれば、心の底でどれほどそう思っていようと『大事にしている』ことにはならないんじゃないか、と思うし、美味しい、と口ではいつも言うけれど実際には食べたがらない、というのでは、本当に『美味しい』と思っていることにはならないのではないか、というような問題だ。少なくとも、ひとつの世界観としてそういう考え方が許されるのではないか、と思う。実践主義、とか、唯物論的な考え方、とかいう言葉でくくれるかな。ちなみに私は、格好の良い生き様を選択する人間に強く憧れる傾向がある。美しい流儀を貫く人間に憧れるし、誇り高い信念を貫く人間に憧れる。だから、珠晶が実際目の前にいたら間違いなく惚れる。